【まとめ】絶対感動!ヒューマンドラマ映画37本!
聴覚を失ったミュージシャン、その生き方とは?『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』
本作の主人公は、恋人とロックバンドを組み、トレーラーハウスを走らせながらアメリカ各地でライブ活動を行っているルーベン(アーメッド)。ドラム担当の彼はある日のライブ中、聴覚の異常に気づく。医師の診断を受けた彼は、回復の見込みがないと知って自暴自棄に。心配する恋人の勧めを受け、ろう者のためのコミュニティで暮らすことになるが……。 音を失ったルーベンが、今までのままでいるのは不可能。彼にできるのは、新しい現実を受け入れることだけ。そんなルーベンの戸惑い、恐怖、嘆き、もがき、そして気づきを、リズ・アーメッドが誠実に切々と演じている。 また、物語はルーベンだけでなく、恋人のルー(オリヴィア・クック)にも目を向けている。ルーベンが“今まで”と切り離されたように、ルーにも新しい日々が。変わりゆくものが押し寄せる中で自分自身と向き合ったとき、果たして愛だけは今までのまま存在し続けるのか? リアルなラブストーリーとしても、考えさせられるものがある。
愛の答えを求める若者たちに共感し、傑作を引用した演出力に唸る!『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』
物語の舞台は、アメリカの田舎町。母親を亡くし、父親と2人で暮らす中国系アメリカ人の高校生エリーは、相容れない同級生たちに囲まれながら、半ば諦めモードで学校生活を送っている。成績がよく、同級生たちに頼まれたレポートの代筆も淡々とこなす(お代はちゃんといただく!)エリーを担任教師は気にかけ、彼女を花開かせるような大学への進学を促すが、エリーの態度はどこまでもクールだ。 そんな中、アメフト部のポールが、ラブレターの代筆をエリーに依頼する。宛先は、学校で一番の美少女アスター。美しさだけでなく知性も備えたアスターは、ポールにとって高嶺の花だ。そればかりか、実はエリーもアスターに恋している。そうとは知らないポール、そして恋心をひた隠すエリーは、アスターを射止めるための『シラノ・ド・ベルジュラック』作戦を遂行することになるが……。 切実さを乾いたユーモアでくるみつつ、文学や映画の粋な引用に本音や皮肉を滲ませながら、それでも漏れてくる青春のきらめきを丁寧にすくい取ったアリス・ウー監督は台湾系アメリカ人で、同性愛者でもある。エリーらの物語には、自身の経験も投影しているそうだ。 となるとパーソナルな香りが漂うかもしれないが、そうではない。有能な監督と愛おしい登場人物たちが、これは“自分たちの物語”なのだと感じさせてくれる。青春映画の新マスターピースとして、長く大切に付き合っていきたい作品だ。