「100枚の名刺」より「1回の飲み会」を…1年364日会食する編集者が飲み会で本当に目指していること
仕事の飲み会で目指すべきは、どのような状態か。編集者の戸賀敬城さんは「仕事の結果を出すには、名刺を集めるだけでは難しく、ビジネスにおいてもアナログ的な裸の付き合いをして、相手との距離感を一気に縮めることだ。仕事の結果の80%は仕事の中身で決まるけれど、20%は飲み会で決まる」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、戸賀敬城『ビジネス会食の技術』(三笠書房)の一部を再編集したものです。 ■「楽しかった」で終わる飲み会は絶対ダメ 今日の飲み会は楽しかった――。 会食後に、こんな感想を漏らしているようであれば、きっと仕事で結果を出すことはできないでしょう。 昭和のバブル時代までは、仕事の関係者とワイワイ盛り上がっているだけでも、仕事がどんどん入ってくる時代でした。 しかし、今は違います。 会社もバブル時代のような余裕はありません。限られた少ない予算の中で、大きな成果を出すことが、社員に求められています。 飲み会に費やす時間や食事代も「コスト」ととらえ、費用対効果を重視しなければなりません。「ああ、楽しかった」「おいしかった」だけでは、飲み会として失敗なのです。 ところが現実には、「楽しく飲めば仕事がもらえる」と思っている人が、いまだにたくさんいるように感じます。特に営業の仕事をしている人は、そのようなスタイルが身についているのでしょう。 私も職業柄、飲み会に誘われることが多いのですが、なかには、それほど仕事の関わりがないにもかかわらず、「とりあえず飲みましょう」といった感覚で誘ってくる人も少なくありません。実際にその飲み会に行ってみると、最初から最後まで仕事の話は出ない。
■時間と食事のコストを必ず回収せよ おそらく相手は、「戸賀と飲んでおけば仕事につながる」という感覚なのだと思いますが、「一緒に飲んだから仕事をしよう」というのは、あまりに非生産的です。 これもまた昭和の飲み方と言わざるを得ません。もちろん、何度も仕事で結果を出している相手であれば、たまには仕事の話抜きでひたすら飲むといったリフレッシュは大切です。 そうでないのなら、飲み会を開催するからには、明確な仕事の目的があるべきです。「プレゼンで企画を通したい」「情報を得たい」など、目的はさまざまでしょうが、飲み会の席で、「一度も具体的な仕事の話が出ない」というのは、あってはならない事態です。 もちろん、飲み会の席でずっと仕事の話ばかりしてしまうと、相手にプレッシャーを与えることになるので、仕事以外の会話で楽しく盛り上げなければなりません。 しかし、どんなにくだけた飲み会の中でも、必ずいくらか仕事の話をして、今後につなげることが必要不可欠。つまり、戦略のない飲み会はムダなのです。 そもそもビジネスにおける飲み会は、「お金の関係」がベースにあります。 私は編集長で、それなりに権限があるので、さまざまな人が飲み会の場で時間をともに過ごしてくれます。もし私が編集長を辞めて無職になったら、誰も見向きもしなくなるでしょう。 そういう意味では、やはり飲み会は仕事なのです。仕事である以上、時間と食事のコストは必ず回収しなければなりません。 ■「飲み会で仕事の結果は変わる」と断言できる理由 飲み会をうまくやれば、仕事がすべてうまくいく――。 期待を裏切るようで申し訳ありませんが、そんなわけがありません。バブル時代は、多少そういう側面もあったかもしれませんが、今の時代、飲み会をやっていれば仕事がもらえ、すべてが円滑に進むというのは絵空事です。 それでも私は、「飲み会で仕事の結果は変わる」と断言できます。 現実的なことを言えば、仕事は「中身」です。どれだけ企画や提案、商品が魅力的かでお客様はお金を出してくれます。メディア編集の世界で言えば、クライアントがいかに多くの広告を出稿してくれるか、これに尽きます。 たとえば、あなたが服を買いにお店に行ったとします。店員さんがとてもフレンドリーで、トークも楽しいし、あなたのファッションセンスを褒めてくれる。接客されていると、とても気分がいい。 しかし、その店員さんが個性的なデザインの服を猛烈にプッシュしてきたら、どうでしょう。あなたの好みの服とは、正反対の路線です。しかも、予算の2倍の価格……。どんなに接客がよくても、その服を買おうとは思わないでしょう。 仕事も同じ。どんなに相手がいい人で、たくさん接待してくれても、仕事の中身がダメなら「仕事をお願いしよう」「この人にお金を出そう」とは思わないのです。