「自らを実験台に確かめたいことがある」――藤岡好明の好奇心を駆り立てた、偉大なる鷹のエース
「新たな野球の価値観を探る実験をしているので、同じ環境で長く続けることが果たして自分にとって良いのかどうか、それは悩みどころではあります。環境を変えることで、同じことでも捉え方は変わります。成長し続けるためにも、海外も含めて経験したことのない環境に飛び込みたい気持ちも正直あります。それは今後考えていきたいと思います」 最後に「藤岡好明にとって野球とは」と質問した。 藤岡は「よくある質問ですね」と軽く笑いながら答えると、「僕にとって野球ですか......」としばし黙考したのち、ゆっくりと口を開いた。 「僕にとっての野球。難しい質問ですが、もしかしたら、今はその答えを探しているのかもしれないですね。ただ間違いなく言えることは、僕は野球を通じてさまざまな人たちに出会えた。僕自身を育て、人格を作り上げてくれたのが野球だと思います」 藤岡は「指導者としての自分には、今はあまり期待できない」と思い、自らベイスターズの2軍投手コーチという職を離れて現役続行した。しかし、感覚を言語化して伝えたいという目標のために自ら材料となり実験を続ける藤岡は、いつか素晴らしい指導者になって野球界に貢献する存在になるのではないか。自分にとって野球とは何かという問いに対する答えも、そのときに見つかるかもしれない。 ●藤岡好明(ふじおか・よしあき) 1985年生まれ。大阪府出身。宮崎日大高からJR九州を経て、2005年大学・社会人ドラフト3巡目でソフトバンク入団。1年目に当時のパ・リーグ新人記録となる62試合に登板。2014年に日本ハムに移籍、2016年途中からはDeNAに移籍。2020年限りで現役引退してDeNA2軍投手コーチに就任した。しかし2022年シーズンは九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズに移籍し、コーチ兼任で現役復帰。今シーズンからプレーするくふうハヤテでは、チーム最年長39歳ながら選手専任で活躍している 取材・文・撮影/会津泰成