「自らを実験台に確かめたいことがある」――藤岡好明の好奇心を駆り立てた、偉大なる鷹のエース
今シーズン、日本野球機構(NPB)にファーム(2軍)リーグ限定で新規参戦した「くふうハヤテベンチャーズ静岡」(以下、くふうハヤテ)。同時に参戦した「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」は独立リーグの老舗球団だったが、くふうハヤテは母体も何もない、まさしくゼロから立ち上げられたチームだ。 【写真】「永久欠番」の名監督になっていた元阪急の2番打者 開幕から約3ヵ月が過ぎた6月末、くふうハヤテに密着取材し、野球人生をかけて新球団に入団した男たちの挑戦を追った。 前回に続いて、NPB3球団を渡り歩き、コーチ転身から独立リーグで現役復帰し、今季はくふうハヤテで戦う藤岡好明の挑戦を紹介する。(全15回連載の12回目) ■自分を実験台にして確かめたいこと DeNA2軍投手コーチという恵まれた立場を自ら捨てた藤岡は、独立リーグを経て、2020年シーズン以来4年ぶりに、現役投手としてNPBに復帰した。 その目的はNPB12球団――1軍での復帰ではなく、自らを材料にした「実験」だった。 「例えば40歳の選手が全力でトレーニングに取り組んだ場合、どこまでパフォーマンスを向上させることができるのか、とか。どこまで取り組めばどんな変化が生まれるのかが知りたい。ある練習メニューにこれだけの時間を費やしたら、これだけの疲労が出てくる、とか。今なら自分自身を実験材料にして確かめることができます。 40歳という年齢でも走ることはどれだけ大切か。それとも筋力強化に比重を高めたほうが良いのか。野球のパフォーマンスを上げるためのトレーニングについて、何が良くて何が駄目なのか。自分自身を実験台にして探って言語化したいという好奇心が、今は一番大きいですね。 感覚を言語化して、なぜその感覚が生まれるのかを伝えられたらと思います。野球界では当たり前に思われているような練習でも、本当に当たり前なのかと疑いながら検証する。本当に当たり前なのか、もしかしたら新しい何かが見つかるかもしれない。それができれば、もし将来、指導者になったとき、必ず役立つ。それを今、ファームとはいえ現役選手として取り組めているので、ものすごく楽しいですね」 自らを材料にした実験。藤岡にそんな好奇心を抱かせる大きなきっかけになったのは、ソフトバンク時代の先輩、和田毅の存在。43歳にして今なお先発投手としてマウンドに上がり続けるホークスのレジェンドだ。