【データに見る「ECの地殻変動」】<第34回>デジタル後進国の日本!ECにできることはまだ多い
先日、毎年恒例の新語・流行語大賞が発表された。今回は「ふてほど」だったが過去を振り返ると24年前の2000年の年間大賞は「IT革命」だ。この辺りからITという言葉が世間で定着しはじめたと筆者は記憶している。 【比較表】デジタル化推進の状況に関する4カ国の比較 もちろんそれ以前からITはあったわけだが一般的には「電算」と呼ばれることが多かったと思う。90年代までと違いITエンジニアはいまや花形職業ではないだろうか。昔を知る筆者は隔世の感を禁じ得ない。 ところで「Amazon」が日本でネット書店としてECを始めたのはちょうど2000年である。まさにIT革命が年間大賞をとった年と同じタイミングだ。一方で「楽天市場」が13店舗でスタートしたのは1997年だが、東京証券取引所に上場したのは2000年とこちらも全く同タイミングである。 端的に表現するとECは「販売のIT化」と言えるだろう。こうやって過去を振り返るとECはITと共に歴史を刻んできたと見てよいと思う。 <遅れをとるデジタル化> そのITだが近年はむしろDX(デジタルトランスフォーメーション)という用語の方が多用されている印象がある。DXはIT化の進化形として経営のあり方に直接関与するものという文脈で語られることが多い。そう考えるとさぞかし日本ではデジタルの力でビジネスが大きく変化しているように感じるだろう。しかしながら実態は必ずしもそうではないとの声を耳にする。業種や企業規模によって力の入れ方はまだら模様のように思われる。 デジタル化推進の状況に関する日本、ドイツ、米国、中国の4カ国の比較を見てみると、「新規ビジネス創出」「顧客体験の創造・向上」「製品・サービスの高付加価値化」「業務プロセスの改善・改革」いずれにおいても日本は最下位だ。デジタル化の中身にもよるが、日本はデジタル後進国と言える。
EC関連でも大きな差
ECとの関連で言えば、「顧客体験の創造・向上」では日本が53.6%に対し、米国は90.6%と大きな差がある。 またフルフィルメントは業務プロセスの塊のようなものだが「業務プロセスの改善・改革」では日本69.3%と低い一方ドイツは86.0%とこれまた高い。 ドイツ、米国はどの項目も高い値だが中国も決して低い値ではない。人口が多い中国では人海戦術でのアナログな手法を想像しがちだがデジタル化が着実に進展していると見る。 <多角的視点で見直しを> 実店舗での販売に対するネットでの販売といったように、ECはリアルチャネルとの対比構造として語られることが多い。無論問題ないがそれはあくまでも販売チャネルのあり方という各論の一つに過ぎない。 大局的な視点でECを企業におけるデジタル化推進の一つとして捉えれば、顧客体験の創造・向上や業務プロセスの改善・改革といった点でできることがたくさんあるのではと思う。多角的な視点でECを見つめ直すのも良いだろう。
日本ネット経済新聞