異例の短縮夏休み──子どもの学習の遅れや心身の健康、どう保障する【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルスの感染拡大により、2~3カ月の休校を余儀なくされた全国の公立小学校。その間の学習の遅れを取り戻すため、多くの自治体が今年度の夏休みを数日~3週間程度短縮することを決めた。子どもや保護者に戸惑いや不安がみられ、ある校長は「休みを削って勉強」させることへの違和感も口にする。「短い夏休み」で子どもの学びや健康は保障されるのか。夏本番を迎える前に、その実情を探った。(ジャーナリスト・秋山千佳/撮影・長谷川美折/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「夏休み短縮、でも宿題はゼロに」
「おはよう まってたよ」「おかえり」 7月上旬、横浜市立三ツ沢小学校(横浜市神奈川区)を訪ねると、休校明けの児童を歓迎するポスターが校舎の窓や階段を彩っていた。すべて教員の手作りだ。
給食時、重田英明校長が1年生の教室をのぞくと、食べ終えてマスクをつけた児童たちから「あっ、校長先生だ」「こんにちは」と元気な声が飛ぶ。給食は同月再開したばかりで、新入生が味わうのはこの日でまだ4回目だ。3年生の教室では、手洗いし、マスクを外した児童が全員前を向いて黙々と食べていた。接触感染や飛沫感染を防ぐためだ。教室の外には、個々が書いた目標が貼られていた。「友だちをふやす」「はじめての子とも仲良くなりたい」など、友人関係の充実を挙げる子が目立つ。 「休校中、どうしても人恋しさがあったのでしょうね」
重田校長はそうおもんぱかる。 市内の小学校では3月3日から5月末まで休校が続き、6月から分散登校や短時間授業で再開し、7月から通常登校となった。同校から各家庭に出した課題は、「ドリルやプリントを配布して、漢字以外は新しい学習範囲は行わずに復習の内容にした」(重田校長)。各児童の家庭状況の違いに配慮したという。
同校が力を注いだのが、休校中に家庭と学校との心理的距離が広がらないようにする工夫だ。家庭訪問を2回以上行い、児童には担任から毎日写真つきのメールを配信。相談事を書いて投函できるポストも校門脇に設置し、投書があれば担任から電話をかけた。学校再開直後の分散登校では各学級が少人数となり、担任に加えて専科の教員も入ったため、一人ひとりに細やかな目配りができた。その結果、予想外のことが起こったと重田校長は話す。 「例年、新年度には登校をしぶる子が出るのですが、今年はゼロだったのです。子どもや保護者の不安をたくさん聞くことができ、スムーズに学校を再開できたことはコロナ禍の不幸中の幸いだと思っています」