役所広司演じる平山がダイハツ「ハイゼットカーゴ」の2世代前モデルを選ぶ理由とは? 映画『PERFECT DAYS』の裏テーマは「カセットテープ」!?
21世紀初頭までクルマの純正オーディオにカセットが残っていた
ところでトイレ掃除のための道具を満載した主人公のダイハツ ハイゼットカーゴは、日本のはたらくクルマを代表する軽バン。しかも1999年~2004年までの先々代、9代目です。清掃会社のクルマという雰囲気でもなく、平山が自分の仕事のために個人的に所有して管理しているように見えます。 映画では自動車のチョイスは登場人物の人となりを物語る重要な道具のひとつですが、あらゆる見栄や趣味性を取り払った実用第一のハイゼットは、トイレ掃除の仕事を淡々と丁寧に行う平山の相棒として象徴的です。 ストーリーの後半で平山の妹(麻生祐未)が運転手つきの大きなレクサスで現れてハイゼットカーゴの隣に停めているシーンはまさしく象徴的で、ふたりの生きている世界と価値観が異なることを物語っています。 それにしても現行型は11代目となっているハイゼットカーゴの2世代も前の9代目、最終年式の2004年式だとしても20年近く前のモデルに乗り続けている平山。物持ちがいいというのもあるでしょうが、おそらくこのモデルに乗り続けている重要な理由は、カセットテープへのこだわりでしょう。ハイゼットカーゴの9代目までは、純正オーディオにカセットデッキが装備されていたんですね。 1990年代にカーオーディオにもCDの波が押し寄せましたが、2000年代初頭までは純正オーディオではカセットデッキが搭載されているクルマがまだまだ残っていました。ダッシュボードの上にオキニのカセットテープを並べて仕事のドライブを楽しむ平山にとって、カセットデッキのない新しいモデルに乗り換える理由はないということなのでしょう。 * * * ただ、もしも9代目ハイゼットカーゴがいよいよ寿命となったとしても心配はいりません。今はニッチとはいえカセット人気が盛り上がっているため、DIN規格の車載用カセットデッキが販売されてますから。インターネットを見ている気配もない平山に、もしどこかで出会ったら教えてあげたい……そう思うこけしなのでした。
AMW こけし