タペストリーのカプリ買収は白紙に。今後のブランド戦略とトランプ政権下でのM&A
今後は「有機的成長とブランド強化に注力」
タペストリーのCEOジョアン・クレヴォワセラ氏は声明の中で、「我々には常に複数の成長戦略が存在しており、今回の決定により今後の方針がより明確になった」と述べた。「第1四半期での好調を踏まえ、我々は大胆かつ迅速に有機的成長を加速させていく。タペストリーは現在、独自性のあるブランド、柔軟なプラットフォーム、熱意あるチーム、そして堅実なキャッシュフローを有する強いポジションにある」。 米の金融サービス企業エドワード・ジョーンズのアナリストで、タペストリーを担当するブライアン・ヤーブロー氏は、タペストリーについて、「買収が阻止されたのは幸運だった」といい、当初からこの買収は得策ではないと考えていたと米Glossyに明かした。 「小売業界における買収で成功するケースは非常に稀だ」とヤーブロー氏は語った。「コーチは順調ですが、ケイト・スペードやスチュアート・ワイツマンはそうではない。3ブランドのうち1ブランドが成功している状況で、さらに3ブランドとも苦戦している会社を買収するのは愚策だ。結果的に、6ブランドのうち5ブランドが低迷し、1ブランドだけが好調という状況になる。それでは意味がない」。 ヤーブロー氏は、それぞれ個々に成功している2つの企業であっても、取引が失敗に終わることは多いと指摘する。さらにブランドを追加することは、現在好調なブランドに注力する能力を奪うことになる。同氏の見解によると、タペストリーはスチュアート・ワイツマンを売却し、コーチの継続的な成功とケイト・スペードの業績回復に焦点を絞るべきだという。
トランプ政権下でのM&A環境は?
タペストリーによるカプリの買収計画が頓挫したことは、FTC委員長リナ・カーン氏にとっても特筆すべき勝利である。カーン氏はこれまでの委員長と比較して、より積極的に大規模な企業M&Aに対処してきた。彼女の任期中、Nvidia(エヌビディア)やマイクロソフト(Microsoft)、ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)、メタ(Meta)による買収案件にも異議を唱えてきた。 しかし、今回のFTCの成功は、カーン氏にとって最後の功績となる可能性がある。次期大統領にドナルド・トランプ氏が就任することで、同氏を大企業寄りの新たな委員長に交代させることが確実視されているからだ。ヤーブロー氏によれば、今回のようにタペストリーの買収阻止が生んだ前例も、トランプ政権下では存続しない可能性があるという。 「次期政権下では、M&A環境が通常の状態に戻ると予測されるだろう」とヤーブロー氏。「今回のタペストリーとカプリの取引は、多くのバッグブランドを1つに統合するものだったので、トランプ政権下でも阻止された可能性がある。しかし、次の政権ではM&Aが再び活発化するだろう」。 [原文:How livestreams are taking over TikTok Shop] Allison Smith(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:坂本凪沙)
編集部