最低賃金引上げへ石破政権初の政労使会議 経済界に慎重論、首相が対応策指示
政府は26日、労働団体や経済界の代表者と話し合う政労使会議を官邸で開いた。石破茂政権になって初の開催となる。2020年代に最低賃金を全国平均で1500円(時給)に引き上げる政府目標の実現に向けた議論を始め、石破首相は「官民挙げて環境整備を図る」と述べた。大企業に比べて経営体力のない中小企業では性急な引き上げに慎重論が根強い。政府目標に賛同を得られるかどうかが焦点となる。 【表】「4人家族で1カ月に必要な金額」京都総評の試算と内訳 会議には連合の芳野友子会長、経団連の十倉雅和会長、日本商工会議所の小林健会頭らが出席した。会議では最低賃金の急激な引き上げについて経済界から慎重な意見が出て、首相は来春までに対応策を策定するよう関係閣僚に指示した。 24年度の最低賃金は1055円。前年度からの上げ幅は51円で、伸び率は5・1%だった。今後5年で目標を達成する場合、445円の増額が必要になる。単純計算で毎年7・3%の伸びが求められる。法律で定められる最低賃金は守らなければ罰則がある。政府は22日に決定した経済対策で、1500円を「高い目標」と位置付けた。 日商の小林会頭は会議終了後、記者団の取材に「地方の小規模事業者は速度が急激だと支払いきれない」と懸念を示した。経団連の十倉会長は「経営者の改善努力には時間がかかる」と指摘。連合の芳野会長は「根拠と丁寧な説明が必要だ」と述べた。 賃金引き上げ原資の確保に悩む中小企業にとっては原材料費や労務費などのコスト上昇分を価格に反映する「価格転嫁」が不可欠だ。小林会頭は中小の価格転嫁についても触れ、「道半ば」と強調した。従来の「最賃1500円」の目標達成時期は30年代半ばだった。前倒しとなる政府目標への賛同は難航が予想される。 また、会議では25年春闘についても協議し、首相が経済界に「高水準の賃上げとなった今年の春闘の勢いで、大幅な賃上げの協力をお願いする」と要請した。連合によると24年春闘の平均賃上げ率は5・10%で、33年ぶりに5%を超えた。組合員300人未満の中小企業は4・45%だった。