【台湾】見本市を初開催、需要対応へ 目前に迫る超高齢化社会(上)
2025年にも「超高齢化社会」(65歳以上の人口が全人口の20%以上の社会)の到来が予想されている台湾。同年の高齢者産業規模は3兆6,000億台湾元(約17兆1,400億円)に上るとも指摘され、今夏には高齢者産業の見本市「高齢健康産業博覧会(ヘルシー・エイジング・テック・ショー)」が台北市で初めて開かれた。超高齢化社会へのニーズに応じるため、幅広い分野の企業が製品やサービスをPRした現場を取材した。【安藤千晶、張成慧】 コンビニ「全家(台湾ファミリーマート)」を運営する全家便利商店は、全家のアプリを通じて食事管理ができる新たなサービスをPRした。 サービスは利用者の運動習慣や、全家で購入したものを含む食品のデータなどを基に、カロリーを計算し、毎日の飲食について提案するもの。全家は同サービスを通じて消費者の減量や健康維持に貢献したい考えで、年末にもサービス提供を開始する計画だ。 サービスの展開に当たっては、台湾のパソコンブランド世界大手、華碩電脳(ASUS)と機器の分野で提携するほか、食品大手で全家のサプライヤーでもある桂冠実業(ローレル)と協力する。 全家の担当者は、消費者が全家の扱う商品のみを食べ続けることはないことから、将来的には台湾衛生福利部(衛生省)が公開しているような食材のデータも利用できるようにしたいと説明。台湾の消費者が多く利用する夜市の屋台や飲食店で食べた物も計算できるようにすることで、より精度の高い提案ができるようになるとした。 全家の担当者によると、8月初旬時点で全家の会員は約1,700万人、アプリのダウンロード数は約1,400万回に上る。会員の主な年齢層は30~45歳で「こうした年齢層の人たちも次第に老いていく。われわれのサービスを使い続けてほしい」と話した。 ■ASUSは健康データの記録装置PR ASUSは「ASUSヘルスハブ」をPRした。ブルートゥースを活用し、高齢者や慢性疾患のある人を対象に血圧や血中酸素、血糖値、体脂肪などのデータを自動的に記録できる装置だ。 スマートフォンなどのモバイルデバイスにデータを送り、家族らに身体の状態を知らせることができるほか、異常なデータを通知することも可能だ。ASUSヘルスハブを使用することで看護者の作業効率を12.5%向上させることができるという。 同社によると、装置は直感的なインターフェースを採用することで、簡単に使うことができるという。同社の担当者は「高齢者は3C(コンシューマー・エレクトロニクス、コミュニケーション、コンピューター)製品を操作する際、不安を感じることがあるため、安心して使うことができるよう配慮した」と説明した。 健康管理プラットフォーム「ヘルス健康+APP」や第5世代(5G)移動通信システムサービスを用いた「5G遠隔診療プラットフォーム」などを紹介したのは、台湾通信大手の遠伝電信(ファーイーストーン・テレコミュニケーションズ)。 遠伝電信の担当者によると、5G遠隔診療プラットフォームの主な利用者は、大きな医療機関が自宅付近にない離島や地方に住む人。サービス開始から8月初旬までに52地域で延べ4万人余りが利用したという。提携している医療機関は50軒以上に上る。 ■25年の産業規模は3.6兆元見通し 高齢健康産業博覧会は、台湾のバイオ業界団体、国家生技医療産業策進会(生策会)などが8月2~4日に台北市の展示会場「台北世界貿易中心展覧館一館」(台北世貿1館)で開いた。 200を超える業者が約735ブースを出展。同見本市では、健康管理や疾病リスクの低減などの「健康ケア」、居住環境や生活支援などの「スマートサービス」、レジャー・娯楽や学習などの「幸福な生活」を三大テーマとした。生策会顧問の沈栄津氏によると、25年の高齢者産業規模は3兆6,000億元に上る見通し。 生策会は、超高齢化社会の到来を控える中、台湾人の平均寿命から健康寿命を差し引いた不健康寿命期間は平均8年で、社会や家族にとって大きな負担になっていると説明。健康を維持するための関連産業をいかにして発展させるかが、課題となっているとの見方を示した。