“完璧さ”にNO?「不完全なファッション」がランウェイに回帰する理由とは
インターネット向けのファッションから、作為的で慎重に編集されたイメージを取り除くことで、気軽な鑑賞用“以上”のルックに立ち戻ることができる。そのかわり、着用者はこれまで隠していた“乱れや欠点”を披露することになる。これは、経済や社会全体の動きと一致している。2010年代の行き過ぎたファッションは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で突如として抑制され、ソーシャルディスタンスの時期を経て私たちの生活が“正常化”すると、少しずつその姿を取り戻していった。
「人生哲学に近いものだと考えています」by カミーユ・シャリエール
しかし、私たちはいま、実生活に適したファッションを探している。ファッションライター兼コンサルタントのカミーユ・シャリエールは、「実際に私たちは日々を慌ただしく過ごし、多くのことに対処できていません。私たちはいま、ファッションが表現する幻想から少し離れて、自分自身をじっくりと見つめ直す必要があります」と適切な見解を示している。
実際には念入りなメンテナンスが必要な「レス・イズ・モア(少ないことは豊かなこと)」のトレンドを、「クリーンガール・メイクアップ」や「クワイエット・ラグジュアリー」といった方法で誰もが手に入れられるいまこそ、その流れに逆らう方が魅力的なのではないだろうか。
「不完全なルック」を作るために新しいものを買う必要はない、とシャリエールは指摘している。「この考えはアティチュード(態度、姿勢)のようなもので、とても気に入っています。だからこそ、私はロッタ(・ヴォルコヴァ)の作品が大好きなのです。単なる服というよりも人生哲学に近いものだと考えています」
現代においては、ありのままの自分で外に出ること自体が、パンク精神に近いものがある。こうしたルックを初期から支持していた俳優のヘレナ・ボナム=カーターや歌手のリリー・アレンなどは、誰かに選んでもらったものや話題を呼ぶためのものを着るのではなく、それぞれに独自のスタイルを体現していた。