ドラマ「アンメット」は意欲作、杉咲花と若葉竜也の丁寧でリアルな演技を見逃さないで
4月クールのドラマでどれが一番おすすめ?という問いに「アンメット!」という声が少なくありません。 記憶障害を持つ脳外科医の主人公をとりまく人々、回を重ねるごとにどんどん物語から目が離せなくなっていきます。 独自視点のTV番組評とオリジナルイラストが人気のコラムニスト・吉田潮さんに、その見どころポイントをうかがいました。
杉咲花の丁寧な演技
物忘れが激しいなんて話じゃない。1年半前事故に遭い、その前後の約2年間の記憶が一切消えている。新しい記憶ができず、しかも記憶したとしても1日で消滅。一晩寝て、朝起きると、すっぽり抜け落ちている。毎朝過去2年分の日記を読み返して、人名と顔、できごとや注意事項をおさらい。そんな苛酷な日々を送る脳外科医が主人公のドラマ『アンメット~ある脳外科医の日記~』(フジ系)をわなわなしながら観ている。 だって、想像してみてよ。毎朝日記で振り返る苦行を。職場の人間の顔写真を見て、名前を覚え直して、さらには患者も思い出さなければいけない。常人には無理! それを杉咲花が丁寧に、かつ説得力をもたせて演じている。まだ若いのに優秀な脳外科医という設定にはやや疑問もあった(経験が圧倒的に足りない)が、花の真摯な姿を応援しないわけにはいかない。
脳外科医の道を半ばあきらめていたヒロイン
花が演じる川内ミヤビは、交通事故による脳の損傷で記憶障害と診断されている。もともと勤務していた関東医科大学病院の脳外科教授・大迫紘一(井浦新)が主治医で、経過観察をうけながら、なかば脳外科医としての道はあきらめていた。 現在は、研修先だった丘陵セントラル病院で看護助手として勤務。救急部長・星前宏太(千葉雄大)や看護師長・津幡玲子(吉瀬美智子)、麻酔科医・成増貴子(野呂佳代)らは、事故以前のミヤビを知っているため、記憶障害への配慮もある。医学知識や過去の経験はあるものの、記憶障害は不安視される。治療に関わることも許されていない。「日々を精一杯生きる」、ミヤビにできることはそれしかなかった。 そこに来るわけよ、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶友治が。若葉竜也演じる三瓶は、無愛想だが的確な診断と確かな技術をもち、ミヤビが脳外科医として復帰できるよう動く。医師不足で患者を救えないことよりも、手術の技術や知識をもっているミヤビが活躍するべきだ、と。しかも、ミヤビの元婚約者だという。心揺れるミヤビ。あきらめて閉ざしていた脳外科医の道に、ひとすじの光が……つうところで、何やら雲行きが怪しくなってくる。