何をやっても「キング」内村航平と比較される…エース橋本大輝が乗り越えた苦悩と葛藤 パリ五輪3冠へ「僕みたいになりたいと魅了する体操を」
昨年12月、日本男子強化コーチの内村さんから言葉をかけられた。「自分のために120%頑張れ。それが恩返しになる」と。「僕が航平さんに憧れたように、次は『橋本大輝みたいな人間になりたい』と魅了できる演技をしたい」。夏の大一番へ、もう迷いはない。 × × × 体操ニッポンの輝かしい歴史上、五輪1大会で金メダル3個以上を獲得したのは1960年ローマの小野喬、1964年東京の遠藤幸雄、1968年メキシコの中山彰規、1968年と1972年ミュンヘンの加藤沢男の計4人。52年ぶりの偉業達成へ、橋本のライバルとなるのが中国勢だ。 橋本は昨秋の世界選手権で3種目を制したものの、中国は同時期に自国開催された杭州アジア大会を優先していた。エースの24歳、張博恒はアジア大会で驚異的な89・299点を出して圧勝。単純比較はできないが、世界選手権2連覇の橋本の得点を3・167点も上回った。直接対決した2021年、2022年の世界選手権は僅差で1勝1敗。気を抜けない戦いが待ち受ける。ともに得意種目の鉄棒でも金メダル候補だ。
前回東京五輪で2位だった団体総合は同五輪覇者のロシア・オリンピック委員会(ROC)が出場できず、中国との一騎打ちが予想される。平行棒が圧倒的に強い鄒敬園らタレントぞろいで、2022年の世界選手権は4点以上の大差で日本は完敗。橋本だけに頼らない戦力の底上げが求められる。 × × × 橋本 大輝(はしもと・だいき)2021年東京五輪は個人総合を史上最年少で制し、種目別鉄棒と2冠。世界選手権は千葉・市船橋高3年時の2019年に初出場し、2022年は初優勝の個人総合を含む四つのメダルを獲得した。2023年は団体総合、個人総合、鉄棒の3種目を制覇。今春順大を卒業し、社会人の強豪セントラルスポーツに加入した。167センチ、59キロ。22歳。千葉県出身。