国が推し進める「マイナ保険証」 デジタル化のメリットに潜む災害時の懸念
薬局では…
「マイナ保険証」の困惑は薬局でも。 名古屋市内の薬局の処方箋コーナーでは、病院で診療を受けた患者に医師から処方された薬を提供します。おととし2月にマイナ保険証用のカードリーダーを導入しましたが…。 「現状1~2割の患者さんがマイナンバーカードを利用している。多い時ですと10人、20人になります」(大島薬局 薬剤師 坪井孝仁さん) 国は読み取り機の導入にあたり、医療機関や薬局に補助金を出して普及を後押ししてきましたが…。 「現状、マイナ保険証は患者さんの保険情報の確認しか使えていない状況です」(坪井さん) 国側の整備が進んでいないので、いまも患者の名前と住所くらいしか確認ができないといいます。それでも坪井さんは使い勝手が良くなることに期待を寄せます。 「医師や薬剤師に過去の病気や薬の名前を聞かれたとき、(患者が)正確に答えることができないことが多かったが、マイナ保険証を利用することによって正確な情報をこちらが得ることができます」(坪井さん) 薬を求めにきた患者は…。 「違うところで病気になったりしたときには便利ですよね。カルテがたどれるのは」(60代) 「便利かなと思うけど、まだちょっと怖いっていうイメージがある。お財布ごと落としたりしたらいやだし」(70代)
災害時での懸念
マイナ保険証をめぐる戸惑いは三重県でも…。 津市にある診療所では、マイナ保険証の利用は多いときで患者の10%ほど、いまは5%ほどにしか満たないといいます。三重県保険医協会の会長でもある宮崎智徳医師。現状では受付時のトラブルなども含めてデメリットのほうが上回っていると感じています。 「他の医者にかかった薬や検査結果などマイナ保険証で受付するとマイナポータルを通じて分かるようになっているが、結果も1か月遅れくらいでの反映になる」(三重県保険医協会 宮崎智徳会長) 三重県保険医協会では、県内の医療機関で5月以降に起こったマイナ保険証のトラブルを調査。アンケートに回答した235の病院や診療所などのうち、約7割でトラブルが発生していました。名前の読み取りができなかったり、資格情報が無効になるケースやカードリーダーの不具合について多く報告されています。 調査の中では、患者が本来の負担額を超えて、一時的に診療費を全額払ったことがある、と答えた医療機関も1割強あったといいます。 宮崎医師は、患者情報を医療機関同士でスムーズに共有するためにも医療現場のデジタル化は必要だとする一方、マイナンバーカードと紐づけないシステムのほうがいいとして、従来の保険証も残すべきだと主張します。 「停電とか地震など災害のときも、(読み取りの)機械がうまく動かないとマイナ保険証は保険証として使えません。医療機関にかかったのにマイナ保険証の不具合で健康や命に関わるような状態になるのが一番避けたいところです」(宮崎会長)