宇宙・農業・ロボット…国内市場縮小見通しの建設業界、収益源多様化へ活路はどこだ
建設業界で新規事業創出に向けた取り組みが活発化している。安藤ハザマは宇宙関連事業への参入を見据えて新組織を発足。熊谷組は環境保全型ハイブリッド農業の実証実験に、戸田建設はロボットコンサルティング事業に乗り出している。人口減少に伴って国内市場が中長期的に縮小していくと予想される中、本業以外の分野にいち早く取り組むことでビジネスの芽を育み、収益源の育成・多様化につなげようとしている。(編集委員・古谷一樹) 【写真】宇宙事業での応用目指す安藤ハザマの山岳トンネル工事技術 2040年までに現状比約3倍の140兆円規模に拡大すると予想される世界の宇宙関連市場。安藤ハザマはその大きな成長性に着目し、土木や建築、機械などバックグラウンドが異なるメンバー6人で構成する「宇宙技術未来創造室」を発足させた。 同社が技術開発のターゲットに定めているのは、月面開発。「得意とする山岳トンネル工事の技術などの応用が見込める」(黒台昌弘技術研究所フロンティア研究部長)とみている。すでに筑波大学システム情報工学系構造エネルギー工学域の松島亘志教授と連携。天体の表層を覆う土の土質力学的特性の解明や、それらを建設基盤・資材として活用するための共同研究に乗り出している。 25年春には事業化に向けたロードマップと行動計画を策定する予定。情報収集を目的に外部のコンソーシアムへの参画を目指すほか、国内外を問わず外部機関との連携も積極的に進めていく考えだ。 熊谷組は魚の陸上養殖と野菜の水耕栽培を組み合わせる「アクアポニックス」を活用した循環型農業に取り組んでいる。「社内で募ったさまざまなアイデアの中から、事業化を狙いに選定した」(上田真社長)プロジェクトとして推進中だ。 同社が発見した独自の微細藻類の培養をアクアポニックスに加えることで魚や野菜の高効率生産を目指す。肥料の使用を最小限に抑え、環境負荷の低減効果も見込んでいる。 外部機関との連携による実証実験にも乗り出した。トーセン農場(佐賀県嬉野市)との協業では、陸上養殖における未利用魚をアップサイクルした魚餌を製造し、陸上養殖魚に給餌することで魚餌のコスト低減などを進める考えだ。 ロボットの導入・運用のコンサルティング事業に参入したのは戸田建設。第1号案件として、長崎市の大型複合施設「長崎スタジアムシティ」で、アクティビティー「ジップライン」の資材を運搬するロボットの導入支援を手がけた。 同社はコンサルティング事業を通じて、建設事業の受注機会の拡大を図る考え。工場やオフィスでのロボットの活用事例を増やすため、提案を強化していく。 国内の建設市場は現在、官民の需要が堅調に推移しているものの、中長期的には需要が大幅に増加する可能性は低く、従来型のビジネスモデルだけでは持続的な成長は困難との見方がある。主力の建設事業とは異なる分野を模索する動きは今後も増えそうだ。