横浜F・マリノスが右膝重症で戦列を離れる宮市亮への思いで一致団結し鹿島との”天王山”に快勝…「どんな時も君は一人じゃない」
宮市が前十字靱帯を断裂するのは右膝だけで2度目。左膝も含めれば3度目になり、手術を受けた過去2度は、いずれも戦列復帰までに約9ヵ月もの時間を要した。12月に30歳になる宮市の心が折れかけていたことが、岩田にも伝わってきた。 「本当にかける言葉を探すのも難しいところがありました」 韓国戦を終えた直後に自身が抱いた思いをこう明かした岩田は、インスタグラムへの投稿の続きでチームメイトやサッカー界の先輩、代表の同志、ファン・サポーターの激励を受けて引退を翻意し、復帰を誓った宮市の言葉に心を震わせた一人だった。西村とともに中2日で先発した鹿島戦へ抱いた決意を、岩田は試合後にこう語った。 「亮くんのためにすべてを出し切ろうと思っていましたし、どんな形でもいいから絶対に勝つと思っていたので、それが結果につながって本当によかった。自分たちは待つだけですけど、いいサポートをして、いい形で迎え入れてあげたい」 どんな形でも、と岩田は謙遜したが、前半37分のFWエウベル(30)の先制点をさかのぼっていけば鹿島のゴールキックをインターセプトした岩田に行き着く。後半6分にはセットプレーのこぼれ球に、ペナルティーアーク付近で右足を一閃。大分トリニータから加入して2年目で決めた、待望のリーグ戦初ゴールでダメを押した。 マリノスを率いるケヴィン・マスカット監督(48)は、試合中に着ていた白いTシャツをわざわざ特製ユニフォームに代えて試合後の公式会見に登壇した。 「彼について話すと、どうしても感情的になってしまう部分がある」 宮市へ抱いている思いを問われた指揮官は、まずこんな断りを入れた。その上で近日中に手術を受ける重症を抱えながらマリノスに戻ってきた宮市と交わした会話のなかで、これならば公にしてもいいだろうと、自ら判断したものを明かしている。 「話し始めて2、3分がたったときに、彼は自分のことではなくチームのことを気にかけていた。あれだけの大怪我を負い、悔しい思いをしているにもかかわらず、彼は『ピッチに立つことはできないが、ピッチの外で最大限、貢献していきたい』と言ってくれた。素晴らしいパーソナリティの持ち主だ。彼がクラブにいることを誇りに思う」 言葉通りに宮市は日産スタジアムに来場している。 自身を励まし、背中を押してくれたファン・サポーターへ直接感謝の思いを届けたかったというのもあるだろう。しかし、キックオフ前のピッチへ姿を現した宮市の目に飛び込んできたのは横断幕であり、特製ユニフォームで練習する仲間たちだった。