「多数決は少数派に対する暴力」…「しようがない」で受け入れないで!大人も気付かない「多数決の問題点」
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行する。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第16回 『日本人の対話力不足の原因は「ジャンケン」だった⁉…なんでも「偶然」に任せてしまうことの思いもよらぬ「弊害」』より続く
多数決は「少数派への暴力」
それから、「多数決」という奴も問題なんだ。 ホームルームとかでよくやるかな。 多数決には二つ問題点があるんだ。何か分かるかな。 ひとつは、少数派を困らせたり、抑圧したりしてしまうこと。 4人の遊びの例に戻ろうか。もし、3人の意見がなんとなく「サッカーしよう」ってなったとするよね。でも、君は体調が悪いからのんびりしたいと思っていたとするね。 そういう時に誰かが「多数決で決めよう」と言ったら、サッカーに決まってしまう。 体調の悪い君は困らない? 多数決って、少数派が置き去りになる可能性が高いんだ。 「それはしようがないんじゃないですか?」 女子中学生が小さな声で言いました。 でも、しようがないって思って君もサッカーをやって、それで寝込んだとしたら、どうだろう。そのまま熱が出て、例えば入院することになってもしようがない? それは困るよね。多数決は少数派を困らせるためにあるんじゃないんだ。 でも気をつけないと、多数決は少数派に対する暴力になるんだ。
【関連記事】
- 【つづきを読む】「自分の好きなことは相手も好きだ」…親切の押し売りをしていませんか?今こそ知るべき“シンパシー”と“エンパシー”の違い
- 【前回の記事を読む】日本人の対話力不足の原因は「ジャンケン」だった⁉…なんでも「偶然」に任せてしまうことの思いもよらぬ「弊害」
- 【はじめから読む】「“君”はどう生きるか」...なぜ作家・鴻上尚史は“君たち”ではなく、“君”と呼びかけたのか。多様性の時代に問われる“個”の生き方とは
- 「もめることは悪いことじゃない」...“和”を重んじる日本人だからこそ勘違いしがちな、話し合いで「一番大切なこと」とは
- “論破”は「死体」を積み上げるだけの行為…“対話”が“論破”よりも長期的に有益な納得の理由