週1回の通院にタクシーを使っていたら「バスのほうが節税になる」と知人に言われました。なぜでしょうか?
節税をするために利用できる制度のひとつが「医療費控除」です。「医療費」なので、診療や治療、薬代のみが対象だと考える方もいるでしょう。しかし、状況によっては通院にかかる費用も対象にできるケースがあります。 制度の対象となる条件を知っておくと、医療費控除をより有効活用できるでしょう。今回は、医療費控除の概要や通院費の範囲、控除できる金額などについてご紹介します。
通院でも使える医療費控除とは
医療費控除は、診療や治療、薬代などが対象となる所得控除制度です。国税庁によると、病気の状態に応じて一般的に支払われるとされる程度を大きく超えない範囲で、その支払った医療費が一定額を超えるときに所得から引かれます。 控除対象は、医師による診療や治療のほか、医薬品、はり師やきゅう師などによる施術、介護サービスの利用、またこうした治療やサービスを受けるために直接支払った費用などです。治療やサービスの利用に際して直接支払った費用としては、通院費や入院する際の部屋代・食事代、松葉づえの購入費などが挙げられます。 ■通院費とは 先述した通院費は病院に通うための費用なので、タクシーで通っても含まれると考える方もいるでしょう。しかし、国税庁のサイトでは「電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象には含まれません」と明記されています。 そのため、バスや電車が通っている地域で、タクシーを利用しているとタクシー代は控除の対象外です。同様の理由で、自家用車のガソリン代や駐車料金も控除の対象外です。特別な理由がないのであれば、タクシーを使うよりもバスや電車で通ったほうが通院費として控除の対象となるため節税できるでしょう。
どれくらいの控除を受けられる?
医療費控除の金額は、自身と同一生計の配偶者や親族のために支払った医療費も対象になります。計算範囲は、1月1日~12月31日までの1年間です。 控除される金額は「実際に支払った医療費の合計額-保険金などでまかなわれた金額-10万円」で計算できます。例えば、週に1回治療費を3000円支払っているとしましょう。保険金による補塡(ほてん)はないものとします。 毎月4週と仮定すると、1ヶ月の医療費は1万2000円、1年間で14万4000円です。控除の式に当てはめると「14万4000円-10万円」となり、4万4000円の控除を受けられます。 一方、もし通院に片道150円のバスを利用したとすると、1ヶ月のバス代は1200円、1年で1万4400円です。今回のケースだと、タクシーをバスに変えるだけで1万円以上多く所得控除を受けられます。 仮に医療費控除以外の控除を適用したあとの所得が300万円だったとしましょう。もしタクシー通院で交通費は対象外のまま医療費控除4万4000円が適用されると、課税所得は295万6000円です。国税庁によれば、この場合、所得税率は10%、控除額は9万7500円なので、所得税は19万8100円です。 もし同じ条件でバス通院にすると、医療費控除額は合計5万8400円です。課税所得は294万1600円になります。税率10%、控除額9万7500円なので、所得税額は19万6660円です。 今回のケースだと、バス通院の有無で所得税額は1440円の差になります。