禅に学ぶ「イライラが止まらない」ときに効果的な呼吸法
仏教において、三毒とは、私たちの心を煩わせ、苦しみの原因となる3つの根本的な煩悩のことを指します。貪(とん/貪欲な心)・瞋(じん/怒り)・痴(ち/愚かさ)。これらの悪感情を表に出さず、遠ざけることができる「呼吸法」とは? 曹洞宗徳雄山建功寺の住職である枡野俊明さんによる書籍『罪悪感の手放し方』より解説します。 他人の幸せが羨ましい...「劣等感で苦しい人生」を抜け出すための言葉 ※本稿は、枡野俊明著『罪悪感の手放し方』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
イライラを心で整えるのは難しい
罪悪感を含め、あらゆる煩悩を遠ざける方法として、「呼吸」があります。 例えば「部下を怒鳴りつけてはいけない。それは重々承知しているけれども、怒りの感情を押し止められそうにない」。こんなとき、どうするか。 それは必ずしも「怒りっぽい」人だけのお悩みではないと思います。私の目にも昔に比べて「切れる」人が増えた印象がありますが、それがその人の本性だとは、到底思えないのです。 むしろ、会社や学校、家庭からの「こうでなければいけない」という期待に応えようと必死に頑張っている人のほうが多いのではないでしょうか。しかしながら、大きすぎる期待はプレッシャーとなり、そのプレッシャーに耐えかねた精神は、いつか限界を迎えます。 そんなときは、呼吸に意識を向け、文字通り「一呼吸を置く」のが、禅の作法です。何も考えず、「ふう~~~~」と息を長く吐いてください。呼吸とは、呼(はいて)から吸(すう)もの。最後まで吐くことができれば、吸うのにコツはいりません。 禅には「調身(ちょうしん)、調息(ちょうそく)、調心(ちょうしん)」という言葉があります。姿勢を整え(調身)、呼吸を整える(調息)と、心も整う(調心)という意味です。 思い出してみてください。イライラしているときや、クヨクヨしているときに、頭のなかで「落ち着こう、落ち着こう」と頑張っても、心は乱れるばかりでしょう。呼吸はハッハッハと浅く短くなり、胸がいっそう苦しくなっていきます。 心の乱れを、心で整えるのは、これほどに難しいのです。心を整えたいなら、身体に意識を向けたほうがいい。そのための呼吸なのです。 今にも感情が爆発しそうで余裕がないときは、先ほど申し上げたように、「ふう~~~~」と息を長く吐くだけでも結構です。 ただし、坐禅で用いる丹田呼吸(腹式呼吸)を覚えると、より効果的です。丹田呼吸をするためには、まず調身です。骨盤を立て、背筋をまっすぐ伸ばします。この姿勢で腹式呼吸を行います。おへその下2寸5分(75ミリ)のところにある丹田を意識し、1分間に3、4回程度のペースで呼吸を繰り返すと、心が落ち着いていくのがわかるはずです。 このとき、背中が丸くなったり、前かがみになっていると呼吸がおなかに落ちず、胸式呼吸から腹式呼吸に切り替わりません。ご注意ください。