■被害者意識や挫折経験が引き金のケースも

　「KA広島」を開くのと同じ時間帯に、家族会も開く。「電話が鳴るたび『警察からでは』と思う」などの不安を分かち合う。父親（97）の窃盗症に長く悩んできた広島市の女性（58）は「苦しみを吐き出すと、心が少し軽くなる」と話す。 　「KA」は、約2500件の症例を診てきた精神科病院「赤城高原ホスピタル」（群馬県）が主導し、全国約20カ所で開かれている。 　竹村道夫院長は、自分の能力や努力が「正当に評価されていない」という被害者意識や身体的・心理的な虐待を受けた経験、挫折経験が窃盗症を発症する引き金になるケースがあると指摘する。「被害を取り戻そう」という心理が働くという。 　窃盗症を治療する医療機関は全国的に少ない。よこがわ駅前クリニック（広島市西区）では、当事者自らに窃盗をする要因や抑止策を多角的に考えさせるプログラムに取り組む。 　加賀谷有行医院長は、患者にKAへの参加を勧める。「体験を話すことで人の役に立つ。他人の行為を聞き『取ってはいけない』と気付く。治療的な意義は大きい」と受け止める。