「市販薬のオーバードーズ問題」販売規制案にドラッグストアが反発する事情
これについては国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏が、「危険ドラッグから市販薬にシフトしたのではないかと推察する方もいるとは思うがバックグラウンドがだいぶ違う」と指摘。市販薬では非行歴もなく、女性が多いという特徴があるとしている。 また、2012年から2020年にかけて市販薬を主たる薬物とする依存患者は約6倍に増えている。「今の規制のままでは濫用を防げないことはたしかだ」(嶋根氏)。 では、市販薬の濫用を防ぐのに、どのような規制であれば実効性があるのか。嶋根氏が厚労省の検討会で示したのがアメリカにおける青少年のOTC薬乱用に対する公衆衛生的な対策だ。アメリカではエフェドリンおよびプソイドエフェドリンを含有する医薬品は、カウンターの後ろ、または施錠されたキャビネットに置かなくてはならないこととされており、記録や保管も行われている。
こうした施策後に、アメリカでは青少年におけるデキストメトルファンの濫用が減少したとのデータも示されている。検討会の委員の多くが、医薬品販売の便利さと安全性には一定の逆相関が成り立つとの主張はこうした事例を根拠としている。カウンター奥の陳列は、万引きなどの不適切な入手方法の予防効果もある。 ただし、アメリカの事例では、医薬品の陳列方法だけでなく、医薬品の箱や包装への啓発文言の記載や保護者に対する教育などがパッケージで行われており、嶋根氏も「このうちのどの施策が功を奏したのか、選別することは難しい」と指摘している。
そのほかに、実効性のある施策として指摘されているのが「店頭での声かけ」だ。嶋根氏も「薬剤師や登録販売者による声かけ」が大量購入の抑制力になる可能性があるとしている。 ■濫用防止に向けドラッグストアが実施すること 日本チェーンドラッグストア協会は、何も反対だけしているわけではなく、市販薬の濫用から国民を守るためのゲートキーパーの役割を担うと宣言している。その手法は医薬品販売への専門家の関与だ。森氏は6月6日の制度部会で「確実に現場で医薬品コーナーに資格者が常駐して、医薬品の濫用、濫用以外も購入状況を見ながら声かけもやると。今までやってこれなかったことを人員を増やして資格者を徹底的に増やしてやっていこうと。これが一番の濫用防止だ」と述べた。この言葉の実行への責任も重いだろう。