水道代が劇的に安くなる!~驚異の発明、節水ノズル
〇躍進の秘密3~「水問題を解決する魔法の皿」 「メリオールデザイン」は一見、ごく普通の食器だが、「水だけで汚れが落とせる皿」だという。皿の表面にはナノレベルの凹凸加工が施されている。これにより、皿と油の間に水が入り込み、汚れを浮かせて落とすことができるのだ。 2023年5月に発売し、今や百貨店でも販売されている。 「完全に差別化されている商品なので、(人気が)爆発すると思います」(「名鉄百貨店」上村嘉臣さん) この食器は能登半島地震の被災地で役立っている。4月中旬、石川・珠洲市の避難所では、水道利用は不便が続いていた。そんな中、食べ終わった皿にペットボトルから少しの水を流し込み、指でこすると汚れが落ちていく。 「拭くとキュッキュッと音がする。この皿を置いておくだけで安心感がある」(室山雅さん) 節水だけでなく、1枚の皿が安らぎももたらしていた。 「どんどんイノベーションを起こしていきたいし、未来のライフスタイルにシフトさせていかないといけない」(高野)
大阪の町工場から世界へ親子タッグで商品開発
6月、普通の皿をメリオール加工できる「メリオールデザインシート」(490円/皿2枚用、780円/皿4枚用)が発売された。普通のウェットシートのようだが、お気に入りの皿をこれで拭き、30分乾かせば、少ない水で汚れが落ちるようになるという。 このシートを売り出したら「メリオールデザイン」が売れなくなってしまう可能性もあるが、「僕たちはお皿を売りたいのではなく、地球環境をよくしたいんです。それだったら皆さんのお皿にこのシートを使ってもらう」(高野)と言う。 高野は1978年、東大阪市で町工場を営む家に生まれる。父は業務用のガスコックを作る職人で、誤差を1000分の2ミリ以内にできる一流の腕前だった。 しかしバブルが弾け、近所の町工場が次々と倒産。当時中学生だった高野は思った。 「両親がこれだけ頑張っているのに全然儲からない。家業は継ぎたくなかったし、だからといってサラリーマンもやりたくなかった。働きたい会社がないんだったら、自分で作ろうと」 会社を作るなら経済の動きを学ぼうと、神戸大学経済学部に進学。卒業後は3年間IT企業に勤め、会社の仕組みを学んだ。 「社長をやるとは決めていたけど、何をやるか決めていなかった。考え方としては、世の中に困っている人がいて、それを解決できたらお金に換えられる可能性があると思っていた」(高野) 世界中の問題を片っ端から調べていくと、目に留まったのが世界の水不足だった。 しかし、節水の知識はおろか、機械の操作もできない。高野は工場に泊まり込み、独学で機械操作やプログラミングを学びながら、ノズルの試作品作りに没頭した。 半年後、84%の節水率を実現させたが、高野は妥協せず改良を続けた。 「例えば他社に30%の節水のものがもしあったとしたら、そこに僕が40%のものを作った、じゃあ今度45%のものを作って、50%のものを作ってという消耗戦みたいなのをやり出すと、自社は体力がないから無理だと思ったんです。『もう僕には勝てないですよ』というところまで極めてから製品を出したいと思いました」(高野) 節水率を極限まで高める「脈動流」。一般的にトイレの洗浄便座などに使われている技術だった。手を借りたのが父の善行さん。部品を削りだす特殊な刃物を作ってもらい、さまざまな形のノズルを試作し数千回もの実験を繰り返した。 ついに2009年、電力は使わず、水圧だけで最大95%の節水を可能にする「バブル90」を完成させた。 それを携えてベルリンに飛び、世界最大級の「水の展示会」に出品すると、大反響を呼んだ。国内では並いる大手メーカーを抑え「“超”モノづくり部品大賞」のグランプリを獲得。満を持して「バブル90」の販売をスタートさせた。