クリスマスの風物詩「プレゼントに『4℃』買う男性」論争、今年ついに終止符が打たれるか? 4℃は「もう“いじられブランド”ではない」という根拠
4℃の話題に戻ろう。これまで、4℃は海外展開を試みてはきたものの、うまくいっているとは言えず、現在では国内市場を中心にビジネスを展開している。現状においては、「先進国で箔付けする」という戦略は取りづらいというのが現実だ。 ■「自分へのご褒美」でブランド復活なるか? ジュエリーは他ブランドも含め、プレゼントやブライダルの需要が厳しくなっている状況下で、4℃は女性客拡大に努め、「自分へのご褒美」というポジションを強化している。
2023年9月、4℃は、ブランド名を隠して消費者に商品を見せる「匿名宝飾店」を東京・原宿に期間限定でオープンした。ブランド名にとらわれず、商品の価値を体験してもらうという試みだが、この施策は高い評価を得ることに成功した。 この展開の背景には、男性からのプレゼント需要を狙うのではなく、女性が自分のために買う宝飾としての市場を拡大する狙いがあったと考えられる。 これら施策が功を奏し、これまで売上高に占める客の男女比率は男性のほうが大きかったが、2024年2月期連結決算では女性客が36%と、男性客(35%)を上回ったという。
今年のクリスマスシーズンの広告を見ると、確かに4℃は「自分へのごほうび」としてのブランドを強化している。 その戦略は数字にも表れているように、じわじわと効いてきている。今回のクリスマスシーズンもそれが大成功となるかはまだわからないが、プレゼントに対する「男女のギャップ」でネタになったことを考えると、市場動向とブランドが置かれた状況をしっかり把握したうえでの展開であるように見える。 ブランド側にとっても、男性が購入してプレゼントした結果、お蔵入りになってしまうよりは、自立した女性が自分で選んで買って身に着けてもらうほうが幸せだと思うし、そういうブランドとしての道を目指したほうが現代的だろう。
4℃に限らず、国産ブランドが虚栄心に流されることなく、実直なブランドとして成功を収めることを、筆者としても願っている。
西山 守 : マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授