日本人を「素麺慣れ」させるプロジェクト
素麺業界の人たちには、素麺を夏の食べ物というイメージを固定させてしまった百貨店などのお中元商戦に複雑な気持ちをにじませる人たちがいる。多くの家庭では、秋になれば食べきれなかった素麺はパントリーで冬眠させられる。夏休みの終わりごろに季節外れとなった素麺を無理やり子どもに食べさせようと素麺消費レシピみたいな特集がメディアで組まれたりするが、それもまた素麺は夏のものという誤った固定観念に基づくものだ。三輪素麺の里である奈良県桜井市の老舗素麺メーカー、マル勝高田商店は、そのイメージを覆そうとしている。 今年の10月、マル勝高田商店は、素麺の「おいしく丁寧なローリングストック啓蒙」を目的に「パントリーのお守り PROJECT」を宣言し、取り組みを開始した。ローリングストックとは、日常的に消費しながら常に新鮮な食品を多めに保存しておく備蓄方法だ。その第一弾は、健康志向の高い企業を対象に素麺を無償提供する、素麺による福利厚生サービスだった。 第二弾となる今回は、季節を問わずに楽しめる素麺のレシピ集を公開した。それに先立ち開かれたレシピアイデア会議では、「ウチの鍋は、〆じゃなくてはじめから素麺を具材として乾麺のまま入れて、素麺の塩分で味付けしてるんよ」、「ソテーのソースに絡めて食べるのがほんまに美味いんや」、「マカロニがなくて素麺でグラタンを作ったらふわふわして美味しかったんです」といったアイデアが出された。 そこから生まれた素麺レシピは、素麺の塩分を利用した「はじめから素麺で味付けする水炊き生姜鍋」や、素麺を煮込んで焼く「エビとアボカドの煮込み素麺チャウダーグラタン」、「糊たっぷり素麺茶漬け」など幅広い。イタリア産のエキストラバージンオリーブオイルと国産の塩とオリジナルブレンドの小麦粉から作られたマル勝高田商店の手延べ素麺は、とくに日持ちがよくコシが強いため、保存食に向き、いろいろな料理に応用できるということだ。 素麺のローリングストックを普及させるには、とにかく素麺を「食べ慣れ」て「調理慣れ」してもらうことが重要だと同社は考える。まずはいろいろなレシピを試して素麺慣れすれば、食の楽しみが一層広がり、使い勝手のいい保存食がパントリーに増えることだろう。
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