「ホームレスは生活保護で助けられない」相談窓口の職員が、困窮者にでたらめ発言 誤りを認めなかった安城市は半年後に一転して謝罪
前の副市長で、2月に就任した三星元人市長は「これまでも生活に困窮し、窓口に相談に来る市民に対し真摯な対応を心がけている」と議会で述べ、前市長の方針を踏襲した。 ただ一方で、厚生労働省は安城市の対応を問題視していた。3月、「外国人が申請をためらうような窓口対応は不適切」との見解を示し、全国の自治体に周知徹底を求めている。それでも、安城市は対応を変えなかった。 ▽制度を誤って理解 しかし、市の対応は急変する。引き金になったのは音声データだった。エレナさんと職員による一連のやりとりは、録音されていた。状況に危機感を持ったある関係者から、音声の提供を受けた共同通信は2023年6月21日、データに含まれた発言を抜粋した記事や音声を配信した。 三星市長は翌日、臨時の記者会見を開き、「市の対応に誤りがあった」と認めて謝罪。さらに、ほかにも同様の事案がなかったか、相談記録などを基に検証し、再発防止に向けた第三者の検討会を立ち上げることも表明した。 三星市長は、職員が不適切な発言を続けた理由を釈明した。「不正受給を防ぎたいという責任感があったが、生活保護制度を誤って理解し、知識も不足していた」。支援者や報道機関への対応についても、こう述べて不適切だった認めている。「職員の言い分を信じたいという意識が強かった。女性(エレナさん)側の話を聞くことを怠った」
▽支離滅裂 私たちは一連の問題を取材する中で、生活保護制度に詳しい専門家や、保護窓口の現場に長年立ってきた元自治体職員らに音声データを聞いてもらった上で、話を聴いた。 政令市で長く生活保護に関わった元職員は「音声を聞く限り、『真摯な対応』とは正反対だ。市職員2人の生半可な知識と勝手な思い込みで、内容が支離滅裂」と指摘した上で、こんな感想を語った。「市は職員だけではなく、当事者の女性らから幅広く事情を聴き取るべきだった。初動を完全に誤った」 元京都市職員で生活保護制度に詳しい花園大の吉永純教授は職員の発言内容のおかしさを指摘するコメントを寄せた。「国の定めた基本的な制度運用を逸脱しており、由々しき事態だ。ホームレス状態であれば一刻も早く救済すべきで、生活保護を拒否する理由にならない。家賃を滞納していても現住所で保護するのが原則で実際に県営住宅に住んでいるのだから在留カードを無効と主張するには無理がある」