「ホームレスは生活保護で助けられない」相談窓口の職員が、困窮者にでたらめ発言 誤りを認めなかった安城市は半年後に一転して謝罪
弁護士が「子どもだけ連れて行くのか」と問うと、「場合によってはあると思います」。弁護士が反発すると、女性職員も「だけど、しょうがないですよね」と同調した。 職員2人のこの発言内容について、生活保護に詳しい関係者は疑問視する。 「この場合、通常は母子生活支援施設を活用する。母子を離さないといけない特段の理由がない限り、子だけ施設に案内することはあり得ない」 一方で、弁護士は2職員の発言の意図について、申請を拒むための嫌がらせ目的と推察していた。「子を離すと伝えて女性の心理を揺さぶり、帰国させるのが狙いだったのではないか」 ▽報道は「事実誤認」 この日も結局、申請は受理されなかったが、その後の支援者の尽力や、領事館の働きかけもあり、昨年12月14日、生活保護費の支給が決定した。一方でエレナさんは、窓口で申請を2度拒まれる中で、「国に帰ればいい」など多数の差別的な発言があったとして、愛知県弁護士会に人権救済を申し立てた。
これに対する安城市の動きは早かった。同じ日、当時の神谷学市長は臨時の記者会見を開き、「国に帰ればいい」などの発言はなかったと全面的に否定。さらにこう続けた。 「通訳を介したやりとりで、市の意図が正しく伝わらなかった」 加えて、この問題を伝えた共同通信などの報道内容を「事実誤認」とする文書を公表。エレナさんの弁護士に対しても、安城市の顧問弁護士から市側の正当性を主張する文書が届いた。 まるで「通訳が悪かった」と言いたげな市長の発言に対し、エレナさんに付き添った通訳2人は「正確に訳した」と反発した。「対応は明らかな外国人への差別と嫌がらせで、市はうそをつき、原因をなすりつけている」 ▽仕事熱心 安城市は、その後も対応の正当性を主張し続けた。2023年1月の定例記者会見でも、神谷市長は「市に誤りはない」と述べ、逆に対応した女性職員を「仕事に熱心」と評価した。3月の市議会では、有識者を交えた再発防止の検討会設置を提案した石川翼市議に対し、市の担当部長(当時)が「対応に誤りはなく、検討会を立ち上げる予定はない」と答弁した。