中国スパイ、米で「史上最悪」規模に トランプ氏の携帯電話もハッキング、重要インフラも標的「有事」に妨害の懸念 日本も侵食か
今年2月には中国政府の支援を受けるハッカー組織「ボルト・タイフーン」が米国各地の通信・エネルギー・運輸や、水道など重要インフラに入り込んだと米国土安全保障省サイバー・インフラ安全局(CISA)が報告書で発表した。さらに3月には米下院の調査で、米港湾に設置された中国国有企業製の荷役クレーンに、操業とは無関係の通信機器が搭載されていたことも分かっている。
今回明らかになった音声盗聴のほか、重要インフラへの侵入も疑われる。中国のハッカー集団について、稲村氏は「今回のように深部に入る能力があり、有事の際に基幹インフラを一部停止させる能力もあると見てよい」とみる。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(日本語電子版)によると、先月だけでも中国政府に関連する企業が米国や英国、フランス、ルーマニアなどでカメラやルーターを含むインターネット接続機器26万台をハッキングしたという。中国を支援するハッカーの数は米連邦捜査局(FBI)のサイバー要員総数の少なくとも50倍に上るという。
稲村氏は「当然、日本にもリスクはある。常に情報収集されていながら気づかないというケースが多いだろう。(攻撃側のサーバーに侵入して攻撃を未然に食い止める)『能動的サイバー防御』の必要性は訴え続けなければならない」と指摘する。
山下裕貴氏「自衛隊の攻撃能力向上に法の変更が急務」
トランプ次期政権下では、対中関税60%を掲げるなど米中対立がさらに激化することも予想される。その半面、石破政権下では、中国外務省が日本に対する短期滞在のビザ免除措置の再開を発表するなど「日中融和ムード」も漂い始めている。
元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は「日本が警戒すべきなのは、米中対立が激化するなか、中国が対日融和に動いてくることだ。対中輸出入の依存度を高めたりして日本を『中立』に立たせようと仕掛けてくるかもしれない。だが、いったん台湾有事となれば、日本も南西諸島や在日米軍基地のネットワークが攻撃対象になりかねない」と警鐘を鳴らす。