山形の女性、特殊詐欺で9820万円の被害 今年最高額、警察・検事装う
県警は26日、警察官と検事を装った特殊詐欺(うそ電話詐欺)で、山形市の70代女性団体職員が、現金計9820万円をだまし取られたと発表した。県警が今年認知した特殊詐欺の最高額で、2004年の被害統計開始以降、18年に発生した1億10万円の被害に次ぐ規模。犯罪に加担したと不安をあおる劇場型で、女性は預貯金のほぼ全額を失ったとみられる。 組織犯罪対策課によると、9月11日、女性のスマートフォンに、警視庁東京中央署の刑事を名乗る「上山(かみやま)」から着信があり、「逮捕した山形出身のタカハシという犯人が、あなたに400万円を渡したと言っている」と告げた。電話を切ると、今度は女性宅の固定電話に、東京中央検察庁検事とかたる「堀口」から電話があり「あなたが400万円を受け取った疑いがある。紙幣番号を調べる必要がある」と言われた。 「上山」からは翌日以降、毎朝夕に連絡が来るようになった。資産状況を尋ねられ、女性は答えてしまった。「堀口」から「あなたは犯罪組織の支援者」と決めつけられ、「口座を凍結する。紙幣番号の優先調査をすれば凍結期間は1カ月で済む。口座から毎日出金し手元で管理してほしい」と要求された。
女性は全く身に覚えのない話だったが、話し方から本物の刑事、検事と信用してしまった。一日の引き落とし限度額50万円を毎日下ろした。限度額の引き上げも指示され応じたという。 「堀口」は「身の潔白を証明するため」と現金を自宅前に置くように指示してきた。女性は計6回、紙袋に780万~3千万円を入れて指定場所に置いた。「受け取る瞬間は見るな」と言われたが、毎回確認しており、異なる男女が1人で回収していたという。 12月16日を最後に、「上山」と「堀口」からの連絡が途絶え、同18日に山形署に相談し被害が分かった。 捜査関係者名乗る手口が横行 県内で「警察官」や「検察官」の捜査関係者を装う手口で金銭をだまし取る特殊詐欺が増えている。被害は11月末現在18件に上り、昨年同時期は確認されていなかった。偽の警察手帳や逮捕状の画像をスマートフォンに送りつけて信用させたり、紙幣番号の確認を名目に金銭を差し出させたりするやり方が主流だ。