“ラストダンス”で眩く輝く。スーパーGT引退のクインタレッリ、ニスモフェスで力もらいラストレースで今季最高の走り「後悔はない」
往時の輝きを失ってしまったかに思われたレジェンドは、最後のレースで誰よりも眩い光を放った。その男こそ4度のGT500チャンピオン、ロニー・クインタレッリだ。 【ギャラリー】“カルソニックブルー”は永久に不滅……スーパーGTを彩った『カルソニック IMPUL』のマシンたち 日産陣営のエースカーであるNISMOの23号車を長らくドライブしてきたクインタレッリは、今季思うようなパフォーマンスを出せなくなったことをきっかけに進退を意識するようになり、今季限りでのスーパーGT活動終了を決断。この決断を下すにあたっては、精神的にもショックだったという。 確かに今季のクインタレッリは、タイヤがミシュランからブリヂストンに変わり、新加入の千代勝正にエースの座を譲るなど、環境の変化もあったことで苦戦気味だったのは確か。しかしながらクインタレッリに近い関係者からは、決して彼の能力が衰えたというわけではないのでは、という声も聞かれていた。 そして迎えたスーパーGT最終レース。舞台は12月の鈴鹿、ノーウエイトのガチンコ勝負だ。クインタレッリは、11番手からスタートする23号車のスタートドライバーを務めたが、そこで会心の走りを見せた。 クインタレッリは着々とポジションを上げていくと、14号車ENEOS X PRIME GR Supraの福住仁嶺と激しい6番手争いを繰り広げた。福住は今最も脂の乗り切った中堅ドライバーのひとりだが、クインタレッリは15周目のシケインで福住のアウトから被せると、オーバーテイク成功。若手のような切れ味鋭い走りで6番手までポジションを上げ、千代にバトンを渡した。 マシンを降りた後は、ピットアウトする千代の姿を見届けていたというクインタレッリ。「千代選手は人柄がすごくて素晴らしいドライバー。そんな彼の気持ちを生で見たくて」と理由を明かし、「彼はこれからも23号車を代表するドライバーなので、僕はこれでやめて全部彼に譲ります。あそこが彼に譲る(受け継ぐ)瞬間でしたね」と振り返った。 今シーズンは自分自身満足できないパフォーマンスが続いていたクインタレッリ。その苦悩はレース前の会見でも語られていた。しかし、今回は目の覚めるような走りを見せた。本人も今季最高の走りだったと語る。 「僕は自分にとても厳しいので、うまくいかない時は自分のスティントに0点だと言いますが、今日はとても良かったです」 ラストレースを8位という結果で終えたクインタレッリは、自らのスティントをそう振り返った。 「圧倒的に今年のベストでした。個人的には、今年これまでの僕のスティントは最悪でしたが、今日は非常に良かった。後悔はありません」 またクインタレッリ曰く、そんな会心のパフォーマンスを見せる源泉となったのが、1週間前に行なわれたニスモフェスティバルだったという。 前述の通り、引退を決断した後は精神的にも辛い時期が続いたクインタレッリ。しかしニスモフェスティバルで多くのファンから労いの声をかけてもらったことがパワーとなったという。曰く、「あれがなければこの走りは絶対できなかった」とのことだ。 通常であれば、シーズン終了後のファン感謝祭という形で行なわれているニスモフェスティバル。しかし今季は、夏の鈴鹿戦が台風の影響で12月へと延期になったことで、ニスモフェスの後にシリーズ戦があるという異例なスケジュールとなっていた。ある意味、台風にも助けられたとも言えるかもしれない。 「元気いっぱいです! もう1スティントいけますよ(笑)」 クインタレッリは笑顔を見せ、スーパーGTでの最後のレースを終えた。
戎井健一郎/Jamie Klein