ヨシタケシンスケが「今までで一番発言の責任が薄い」と語る絵本。「かもしれない」という責任転嫁に込めた思いを語るインタビュー
絵本作家のヨシタケシンスケさんが、「ちょっぴり心が軽くなる絵本」シリーズ第三弾となる『ちょっぴりながもち するそうです』(白泉社)を刊行。本の中には、どこかで見たことがあるような“おまじない”っぽいお話が並んでいる。この既視感はなんだろう…というところから、本作の制作意図や裏話について話を聞いた。
●教室で噂になっていたような話が面白い
――今回は『「○○だそうです」などと書かれたお話が並んでいますが、このテーマはどのようにして生まれたんですか? ヨシタケシンスケさん(以下、ヨシタケ):こういう企画はどうだろう、と思っているテーマがいくつかあって、その中に「○○だそうです」みたいな噂話ばかりを載せるという本の企画があったんです。 ――噂話なんですね。 ヨシタケ:昨今どんどん、いい加減なことが言えない世の中になっていますよね。何かを発言するとすぐに「それは確かなことなのか」「エビデンスは?」みたいな話になるので、今まで以上に気をつかわないといけない。それも必要なことでしょうけど、息苦しさを感じることもあって。本当か嘘かわからないような情報を、笑って発信できるようなフォーマットがあってもいいんじゃないかと。 ――それが今回のおまじないのようなお話に。 ヨシタケ:はい。ちっちゃい頃、根拠はないけど学校の教室で噂になっていたおまじないとか、あったじゃないですか。「筆箱の中に好きな子の名前を書いて忍ばせておく」とか。そういう日常の楽しみ方って面白いなと。いい加減なことを「いい加減なこと言いますよ」と言った上で伝える分には、いいんじゃないかと思って。 ――「○○だそうです」という言葉には、本当か嘘かわからない“いい加減さ”がありますね。 ヨシタケ:僕は絵本の中で断言をしないんです。「そうかもしれませんね」みたいなことをずっと言ってきましたけど、とうとうそれが人から聞いた話になってしまった。今まででいちばん発言の責任が薄いですね。 ――「かもしれない」以上に…。 ヨシタケ:そう。すでに自分の意見ですらないという、究極の責任転嫁のフォーマットに落ち着いた形です。