なぜ誰も管理職になりたがらないのか?「そりゃそうだ」と思える納得の理由
日本労働組合総連合会(連合)の「労働時間に関する調査」(2015年)によると、1日の平均的な労働時間は一般社員8.7時間、主任クラス9.1時間、係長クラス9.0時間、課長クラス以上9.1時間となっている。これだけ見るとさほど大きな差はないようだ。 ただし業種による差異が大きく、企業ごとのばらつきも大きいので、管理職が長時間労働している会社もあるだろう。 年代別に見ると、30代は一般社員と管理職では管理職の方が労働時間は長く、40代以降になると大きな差がなくなるという傾向があるので、管理職になると長時間労働になるという印象が強いかもしれない。また、管理職になると裁量労働になるので、長時間労働しても決まった手当しか出ないことから、報われないというイメージがあるかもしれない。 はっきりと言えることは、管理職昇進以降は、効率よく働けるように仕事のやり方を見直す必要があるということだ。自分自身の労働時間を決めて、その総労働時間をうまく配分して成果を上げるという発想が求められる。管理職になって、仕事の指示を受ける側から、仕事の指示を出す側に回るので、働き方は自分で決められるようになる。このような切り替えができていないと労働時間が長くなってしまう可能性がある。逆に工夫はいくらでもできるということである。 上司が長時間労働しているとメンバーも帰りにくく、チームメンバーも長時間労働になりやすい。メンバーのためにも、効率よく仕事を終わらせてさっさと帰る管理職を目指す方がよい。 もうひとつ重要なことは、他者を通じて組織成果を上げる立場になると、労働時間の長さと上げる業績の大きさに因果関係がなくなるということである。たとえば営業社員(プレイヤー)では長時間労働している人ほど業績が高い傾向があるが、営業マネジャーになると、労働時間が長いマネジャーが必ずしも高い業績を上げているわけではないのである(*2)。限られた時間を何に使うか、どう使うかによって、組織成果は左右されるのである。 *2 リクルートワークス研究所「働き方改革時代にマネジャーは何をすべきか――働き方改革の中間報告」(Works Report 2019)参照
大久保幸夫