会心のランニング本塁打 静岡・加藤学園、悲願の初校歌 センバツ交流試合
「甲子園」を初めて経験するチーム同士の対戦となった2020年甲子園高校野球交流試合第3日の第2試合は、加藤学園(静岡)が鹿児島城西を3―1で降した。勝利を大きく引き寄せたのは、主軸・杉山尊選手(3年)が放った2点ランニング本塁打。交流試合初となる会心の一打は、春夏の甲子園大会中止など試練の日々を吹き飛ばし、晴れ渡った青空に最高の笑顔を輝かせた。 【鹿児島城西-加藤学園 熱戦の様子を写真特集で】 センバツで春夏通じて初の甲子園出場をつかみ取った加藤学園。春も夏も甲子園大会が中止となったがナインはその度に目標を新たにして前に進んできた。しかし7月12日、8月のセンバツ交流試合への出場が決まり、「甲子園に行くチーム」として優勝を目指した県独自大会の初戦。強豪校・飛龍に接戦の末敗れ、自信は砕かれた。「これで交流試合に出てもいいんだろうか」。チームはこれまでにないほど重い雰囲気に包まれた。この試合で最後の打者となったのが杉山選手。内野フライでゲームセットとなった。「緊張する場面では力が入りすぎてしまった」 あれから1カ月。不安や悩みを感じる選手たちに米山学監督は「センバツは勝ち負けだけではない部分も評価されて選出された。恥じることもないし、一生懸命やろう」と話をしてきた。選手たちもそれに呼応。チームとしても個人としても気持ちを切り替えることを意識して、交流試合に臨んだ。 1―0からリードを広げたい八回裏2死二塁。「とにかく楽しもう」と無心で振ることだけを考えて打席に入った。2球目の直球をとらえると、打球は右中間へ大きくアーチを描いた。「三塁まで行ける」と50メートル6秒1の俊足で塁を蹴ると、腕を大きく回す三塁コーチと目が合った。すぐに目標を「本塁」に切り替えて、頭から本塁へ滑り込んだ。 全員で「甲子園で校歌を歌おう」と鼓舞し合いながらやってきた。「甲子園はすごい舞台。(試合前の)ノックの時から楽しくて」。勝利して校歌を歌った時は甲子園という舞台に圧倒され、喜びで頭が真っ白になったという。「最後に甲子園でプレーさせてもらって、高校生最後の試合をこういう形で終えられて良かった」とすがすがしい笑顔を見せた。【隈元悠太、深野麟之介】