Aマッソが初優勝!無冠だったふたりが『ワタナベお笑いNo.1』で見せた“圧倒的パワーと攻撃力”【今月のお笑い事件簿】
ギリギリを攻めることが、過剰な厳しさへのアンチテーゼに
テレビスターになりきった有吉(弘行)さんは、地上波で過激なことを攻めるという神のような立ち位置になりつつある。 『有吉クイズ』でのボンデージ姿の撮影やOラインの脱毛も相当な冒険に思えていたが、それ以上の攻めである『脱法TV』は一度観るともう抜け出せない。 「放送禁止用語」の脱法に成功するシーンを、私はすでに5周ほど観ている。スタジオの有吉さんと(霜降り明星)せいやさんのやりとりも含めて、こんなにワクワクする映像はなかなかない。 ただ、『脱法TV』が毎週放送になる未来はかなり見えない。『27時間脱法TV』はぜひ観たいけれど。やっていることはくだらないが、根本の問いかけがまじめなのが憎くおもしろい。 なにかとコンプライアンスが厳しくなっているが、たしかに「さすがにそれは気にしすぎなのでは?」「その線引きは必要なの?」と感じるものもある。 誰かの意見が通ると誰かの意見が無碍(むげ)にされるというのは、どこにでもあることだが、「ギリを攻めてみる」というのは生活にも応用が効くヒントなのではないかとも思う。この番組が放送されていること自体が、過剰な厳しさへのアンチテーゼとなっている。 さらにもうひとつ外側を考えると、「脱法しよう」という意志がある番組が放送されているということは、それが容認されている事実がある。これだけでも少し心が躍る。 まじめに生きれば生きるほど、より脱法が楽しめるのではなかろうか。そう思うと、コンプライアンスを遵守することすべてが脱法へのフリになってしまう。 おもしろがっていいことと、おもしろがってはいけないこと、この線引きは非常に難しい。人によって異なるので、誰かと共有するのは慎重になる。 個人的には、マイナスなことも笑えたら一番いいなと思う。許される範囲で不自由をおもしろがりたいと、お笑いを観て実感する1カ月だった。 先が思いやられる世の中に、お笑いはきっと必要だ。
文=奥森皐月