災害時は「キャンプ道具でほとんど対応できる」 キャンパーの実体験にみる防災アイデア
キャンプ好きな3人の女性から成る「CAMMOC(キャンモック)」。防災士の資格をもつキャンプインストラクターとして、"いつも"の暮らしを豊かにするものが"もしも"のときも役立ち支えてくれるという「フェーズフリー」の考え方のもと、目指すは、理想的なライフスタイルと防災の両立。 【写真】マミさんの寝室。ワゴンや観葉植物はキャスター付きで掃除がラクにできるが、普段は壁面の有孔ボードにフックで固定している。 そのためのアイデアが、新刊『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』にたっぷり収録されています。 キャンモックのマミさんが、フェーズフリーの普及や、フェーズフリーな商品やサービスの企画、認証を行う「フェーズフリー協会」代表、佐藤唯行さんと対談。その様子を全3回の連載でお届けします。本記事は第1回です。 (構成:三浦ゆえ)
キャンプのある暮らし、そして防災へ
【佐藤】マミさんたちは"ママキャンパー"3人で、キャンプから得た防災のアイデアを提案していますが、そもそもキャンプはいつはじめたんですか? 【マミ】3人それぞれですが、私はかれこれ30年以上前ですね。小学生の6年間、ガールスカウトに入っていました。仕事として"キャンプのある暮らし"を提案しはじめたのは、2011年ごろです。 【佐藤】ガールスカウトって、訓練が厳しいと聞きますよ。 【マミ】ハードで、まさに練習を繰り返す訓練のようなものは大変なこともありました。その後ブランクを経て20代の後半、いまキャンモックを一緒にやっているメンバーに誘われてキャンプをしたところ、好きなもの食べて飲んで、好きな音楽をかけて、キャンプってこんなに楽しいんだ! と一気にハマりました。 【佐藤】ガールスカウトの訓練とは違った? 【マミ】はい、最初は、自然のなかでいかに快適な空間を作れるかというのに夢中になって、アイテムをいろいろとそろえました。こんなに便利なモノがあるのか、おしゃれなものもある!と出会うたびに買っていましたね。 【佐藤】いいものがたくさんあるから、キリがないですよね。キャンプを極める人って、モノに頼らない方向にいきませんか? 火を起こすにもカセットコンロは使わないとか、持っていくものを極力ミニマムにして、できるだけ使わずに過ごすとか。 【マミ】そうなんです、私もガールスカウトのほうに戻っていった時期があります。多くのキャンパーが通る道ですね。モノを減らすクリエイティビティをいかに発揮させるかに興味がわくんです。 【佐藤】私がフェーズフリー、つまり「平常時」と「災害時」という2つの時間=Phaseを分けるのをやめてみよう、と提唱しはじめたのが2014年。マミさんたちはその前からキャンプの活動をしていたわけですよね。それが防災とつながったのは、いつ、どういうきっかけで? 【マミ】キャンモックとして「キャンプのある暮らし」を提案しはじめたときは、防災のことは特に意識していませんでした。私たちは3人とも大規模の被災経験がなく、いま思えば防災意識は高くなかったんです。それが2019年、関東が大型台風に襲われて......。 【佐藤】「令和元年東日本台風」ですね。 【マミ】はい、ニュースでも備えるよう盛んに呼びかけられて、私も何かしなきゃと思いました。ライフラインが何日かストップするかもしれない、じゃあ何が必要だろうと考えて......。そのとき「キャンプの道具でほとんど対応できる」と気づいたんです。感動しましたね、私はすでに備えることができていたんです。 それでも足りない水などは買いに行きましたが、キャンプをとおして自分が1日にどのくらいの水を必要とするのかを知っている。だから冷静に行動できました。 【佐藤】経験の賜物ですね。キャンプは、日常の暮らしから非日常の暮らしに、自分の意思で入っていく活動です。街中での、便利なモノがたくさんあるところから、ライフラインがないところに行く。 一方で災害は、突然地震や台風に見舞われて、平常時から否応なしに非常時へと突入していく......。そこに自分の意志があるかないかの違いがあるだけで、同じことをやっているように僕は思います。そこでの生活の質をどう保つかを考えるのが、共通点かな。