洗濯の歴史って知ってる? 下丸子の『五十嵐健治記念洗濯資料館』へ。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「し」は下丸子へ。
少しずつセーターやウールのシャツが棚の一軍へ戻りつつある今日この頃。重衣料が着られるワクワクを感じている一方で、毎年モヤモヤしているのが洗い方だ。キッズサイズへ縮んでしまうのはこの上なくつらい。気にしたことなかったけれど、クリーニングのイロハを知る必要があるのではないだろうか。下丸子にぴったりのところがあるじゃないか。クリーニングの本丸「白洋舍」本社ビルの一角に、洗濯文化そのものを学べる資料館が。 東京五十音散策 下丸子①
下丸子駅からガス橋方面へ歩いて10分、ガラス張りのゲートをくぐると、『五十嵐健治記念洗濯資料館』に到着する。明治39年に創業後、日本のドライクリーニングの道を切り拓いてきた白洋舍がかつて使用していた巨大な洗濯機をはじめ、石けんが発明される前に洗剤として用いられた植物、洗濯桶やザラ板などなど、あらゆる洗濯にまつわる品々が展示されている。中でも、古くは紀元前のヒノシや炭火アイロン(!)といった衣類のシワを伸ばす道具が多く、日本はもちろん、西洋やアメリカ製まで。単純にデザインの違いを見比べられるのもヴィンテージ雑貨店のようで面白い。
そもそもドライクリーニングとは、文字どおり、水の代わりに油を原料にした溶剤で洗浄する方法だ。生地のダメージがすこぶる抑えられるが、設備と特殊溶剤が必要なため、クリーニング店の専売特許。館長の五十嵐昌治さん曰く、その歴史はフランスから始まっている。
「1840年頃です。フランスの洋服屋だったジョリー・ブレンにより発明され、ドイツやイギリス、アメリカへと伝わりました。その後、同社の創設者である五十嵐健治が日本へ持ち込んだのですが、当時の一般家庭では洋服自体が広まっていなかったので、海軍のウール地の真っ白い制服などを主に洗濯していました。そうして徐々に洋服が着られるようになってからは、『家庭洗濯化学展覧会』を開催したり、洗濯の心得を記した小冊子を配布したりと、地道に普及活動を行いましたね。」