銀河系の周り、衛星銀河“多過ぎ”問題が浮上 すばる望遠鏡観測
観測性能や理論を勘案した上で、この範囲には衛星銀河が3~5個あると想定されたのに対し、実際には既に9個発見された。これを銀河系全体に換算すると、少なくとも500個あることになり、推定されてきた220個程度を上回る。こうしてミッシングサテライト問題から一転し、逆に衛星銀河が“多過ぎる”問題に直面することとなった。
宇宙の質量のうち星や生物の体、身の回りの物などを構成する通常の物質はわずか4.9%。26.8%が光などの電磁波で観測できない暗黒物質で、宇宙の成り立ちや構造の鍵を握る重要物質とされ、正体の解明が一大課題となっている。
研究グループの東北大学大学院理学研究科の千葉柾司(まさし)教授(天文学)は「ドイツのグループも、別の銀河で衛星銀河が多いことを見いだしている。従来の理論は、星の形成に“ブレーキ”をかけ過ぎて理解していたことになり、計算の精度や物理過程の理解を再検討する必要がある。ただ、少なくとも当初のミッシングサテライト問題は解決できそうだ。さらに発見数を増やし、統計的な精度を上げていく必要がある」と話している。特に米国が南米チリに建設中のベラ・ルービン天文台による南半球の空の観測に対し、期待が高まっているという。
研究グループは国立天文台、東北大学、法政大学、仙台高等専門学校、米プリンストン大学、台湾中央研究院天文及天体物理研究所、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構で構成。成果は日本天文学会の欧文研究報告に6月8日掲載され、東北大学などが同28日に発表した。