最初期型ワンオーナーのホンダ「NSX」に試乗! これは間違いなく日本製スポーツカーの金字塔です【旧車ソムリエ】
すべての90年代ミドル級スーパーカーのなかでも珠玉の1台
まずはクルマに慣れるために、街道では流れに任せてゆっくりと走らせていた。でも、撮影のためにワインディングロードに入ると、NSXは真の姿を見せはじめた。 パワーは当時の自主規制に従った280ps。ただし、オーナーのKさんは購入後わずか約2000kmの段階でエンジンを降ろし、入念なバランス取りをおこなったとのこと。その結果、Kさんとは親交のあった上原 繁氏からも「お墨つき」を得ることができたという。 Kさんいわく「NSXのVTECは、切り替わりが体感できないくらいにスムーズなのが正しい」とのこと。たしかに、低回転域では高級セダンのようなマナーの良さばかりが目立つが、一切の「段差」を感じることなく高回転域に突入すると、「クァオオオオーンッ!」という咆哮とともに、目の覚めるようなレスポンスと吹け上がりを余すところなく披露する。 さらに総アルミボディの軽さのおかげなのだろうか、筆者のコーンズ時代の記憶にかすかに残るフェラーリ「348tb」よりも明らかに速いように感じられたものの、それでもやはり、NSXの真骨頂はハンドリングにこそあるといわねばなるまい。 アルミモノコックらしい「ドライな」高剛性と軽さにくわえ、4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションに施された妙なる調律により、タイトコーナーではライトウェイトスポーツカーを思わせる俊敏な身のこなしを見せるいっぽう、中・高速コーナーでは非常に安定したスタビリティを示してくれるのだ。 この素晴らしさは、同じ時代のスーパースポーツたちと同じテーブルで戦い、しかもさまざまな部分で凌駕するレベル。ポルシェ「911カレラ(3.2)」と同等の絶対的安心感がありながら、あの時代の911に垣間見られる、ビギナーのフールプルーフを拒む気難しさは皆無である。そのかたわら、ちょっと本気で走らせればフェラーリ348tbにも負けない煽情的官能も味わえる。 そしてなにより、エンジンフィールからハンドリングに至るあらゆるところで感じられる爽快感は、国籍やクラスを問わず、1990年代に生まれたすべてのミドル級スーパーカーのなかでも、格別なものと感じられたのである。
武田公実(TAKEDA Hiromi)
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