最初期型ワンオーナーのホンダ「NSX」に試乗! これは間違いなく日本製スポーツカーの金字塔です【旧車ソムリエ】
デビュー直後に購入したシリアルナンバー「143」の個体
今回の「旧車ソムリエ」取材にあたってご提供いただいたホンダNSXは、ファーストオーナーであるK氏が、デビュー直後に新車として購入した個体。シリアルナンバーは「143」で、もしかしたら一般顧客に引き渡されたものとしては、国内第1号車の可能性もあるという。ちなみに、故・徳大寺有恒氏が入手したのは「146」番だったそうだ。 それから30余年、K氏は大切にこのNSXを愛用してきた。ほかにポルシェ「911」やフェラーリなども入手しながらも、結局手もとに残ったのはこのNSXだったという。 そんな大切な愛車のステアリングを委ねてくださったことに感謝しつつ、もちろんアルミ製の軽いドアを開くと、この時代に作られたあらゆるホンダ車と同じ「ピンポン、ピンポン」という電子警告チャイム。その懐かしくもほほえましい音に油断してしまうも、やはり全高1170mmのスーパーカーである。乗り込むには少々アクロバティックな動作を必要とするのは、同時代のフェラーリと大差ない。 全幅1810mmと、現在のクルマに慣れてしまった眼で見るととてもスマートながら、ホイールベースや全長は12気筒エンジンの「テスタロッサ」に近いサイズ感で、パッと見にはいささか大柄にも映る。しかし、高速域ではちょっと怖いくらいに開けた前方視界をはじめ、四方の見晴らしが非常に良いため、この種のスーパーカーにありがちな、取り回しの劣悪さによるストレスは皆無である。
節度感あるシフトフィールはフェラーリよりも魅力的?
そして、いよいよ念願の試乗のときが訪れた。キーをひねると、これも往年のホンダ車と同じ軽いクランキング音のあと、間髪入れずにV6エンジンが始動。まるでレジェンドのように静かでスムーズなアイドリングに入る、 当時の「プレリュード」などのホンダ製スポーティカーは、クラッチやステアリングなどの操作系が、ちょっと不安を感じるほどに軽いものだったと記憶しているが、NSXのクラッチは比較的がっしりとした足応え。でも、操作自体はとてもナチュラルで、発進に特別なテクニックなどはまったく必要ない。 また、初期型NSXでは4速AT仕様車にはパワーステアリングが標準装備されていた一方で、マニュアル車はノンパワー。同じくノンパワーだった当時のフェラーリでいえば、「328GTB/GTS」よりも少々軽い程度の重さながら、今となってはそれが頼もしくて心地よくさえ感じられる。 この個体は「タイプR」用のチタン製シフトノブに換装されており、シフトに要する力は若干重くなっているそうだが、それでも「ゴクッ、ゴクッ」という節度感のある感触はとても心地よい。この部分だけを比較すると、ストロークが長いうえにシフトゲートにこすりがちなフェラーリのシフトフィールよりも、個人的には魅力的なものと感じられてしまう。
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