ボルボEX30 詳細データテスト 高い動力とほどほどの操縦性 物足りない乗り心地 厄介な監視機能
キックダウン加速
20-40mph(32-64km/h):1.6秒 30-50(48-80):1.9秒 40-60(64-97):2.4秒 50-70(80-113):3.1秒 60-80(97-129):4.0秒 70-90(113-145):5.1秒 80-100(129-161):6.5秒 90-110(145-177):8.3秒
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温4℃ 30-0マイル/時(48km/h):8.8m 50-0マイル/時(80km/h):23.6m 70-0マイル/時(113km/h):45.9m 60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.96秒 ■ライバルの制動距離 スマート#1プレミアム(2023年) テスト条件:湿潤路面/気温12℃ 30-0マイル/時(48km/h):8.6m 50-0マイル/時(80km/h):23.1m 70-0マイル/時(113km/h):46.0m
結論 ★★★★★★☆☆☆☆
自動車メーカーがどこもそうであるように、ボルボもマーケットの新たなセグメントへ参入する際には、それまでと異なることをしても許されるものだ。しかし、それが裏目に出るのはいただけない。少なくとも、それを非難する声がなかったわけではないのに。 スモールSUVだとカテゴライズされているものの、EX30の実態は地上高を多少引き上げたものの、まずまずうまいパッケージングを施したハッチバックだ。ボルボのラインナップとしては、明らかに異なる方向性を示している。『小さいのだから、実用面の不足には目をつぶろう』という姿勢が透けて見える。競合するコンパクトEVと並べても、パッケージングも万能性もそこそこだ。 このクルマのポジショニングは、とくに2モーター仕様で言えることがだが、必要以上に強力なパフォーマンスを備えていながら、効率性や航続距離は物足りず、乗り心地の煮詰めもやや足りないという、これまでにないほど不合理なものとなっている。 しかしながら、キャビンのレイアウトやデジタル操作系のコンセプトは、ある種のサステナビリティや安全への傾倒ぶりが押し付けがましいくらい感じられる。しかし実際のところは、操作のしやすさやドライバーの注意力を逸らさないようにするという点で、ボルボのあるべき姿よりかなりの妥協を強いるものとなってしまっているのだ。 ■担当テスターのアドバイス ◆イリヤ・バプラート エネルギー回生の標準設定はかなりマイルドだが、完全にオフになるわけではない。そして、プラットフォームを共用するスマート#1と同じ、レスポンス遅れという問題を抱えている。50km/h程度を維持して走ろうとすると、穏やかながらブレーキがかかってしまうことがある。 ◆マット・ソーンダース ボルボのソフトウェア担当エンジニアは、この秋にインフォテインメント系のアップデートを実施し、使い勝手を大幅に高めるという。それを実現するためにカスタマーデータの収集が必要だった、と言うのが彼らの主張だが、ユーザーの手に渡る前に真っ当な商品に仕上げておくのが、作り手の筋というものではないだろうか。 ■オプション追加のアドバイス テスト車となったシングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス以上の装備内容は必要ないだろう。しかし、長距離移動の機会がないなら、エントリーモデルは検討の余地あり。軽量なぶん、乗り心地と電費が改善されるはずだ。 ■改善してほしいポイント ・重量のかさむモデルは、ダンパーのチューンが必要だ。 ・ドライバーモニタリングと制限速度アラームの作動はもっと唐突でないものにしてもらいたい。 ・メーターとトリップコンピュータの情報を表示するヘッドアップディスプレイがほしい。 ・ADASやドライバーモニタリングへダイレクトにアクセスできる実体ボタンを装備してほしい。
イリヤ・バプラート(執筆) マット・ソーンダース(執筆) 関耕一郎(翻訳)