いまの中古価格は新車価格の10倍近い1億円! スカイラインR33GT-Rのコンプリートカー「NISMO400R」は走りも値段も「国宝」レベル
ブランド戦略「出力向上ではなく、トータルバランスを磨く」の礎を作った
「400」という数字はシルビアの270と同じで最高出力を示す。アフターマーケットではそれを上まわるスペックを持つGT-Rのチューンドカーは数多く存在していたが、400馬力に留めたのは、コンプリートカー販売を見据え、「日産ブランドとして安心、安全を担保する」ことを重視したため。過去のレースの実績から各部の信頼耐久性に問題がないことを目標としたのだ。ショップのチューニングカーとは一線を画す考えだ。 ストリートパーツを含めて、約1年の開発期間を経て正式発表されたNISMO 400Rは、当初は「サーキット最速のチューニングカー」を目指して開発が進められたが、最終的にはロードカーとしてのバランスを重視する方向にシフトした。市販のGT-Rのコンセプトである「意のままに操れる楽しさ」を底上げし、「ラップタイムだけに惑わされることなく、トータルバランスを考え、クルマそのものの性格を作り上げていく」という考えは、のちのNISMOのカスタマイズパーツ作りの基盤となった。NISMOとしても特別なクルマであったのだ。
レース直系の最新アイテムを惜しみなく投入
また、NISMO 400Rでは、これまでのアフターマーケットでは存在しなかった、最新のパーツが数多く投入された。エンジンは、当時日産モータースポーツ活動の一翼を担っていた日産工機(グループAエンジンの製作も担当)が日本のGTレースや海外のレース向けに新たに開発した2.8リッターのエンジンパーツを使用し、手組みした上で搭載した。これは、量産車の排ガス試験をクリアするため、カムシャフトやバルブタイミングの変更ができないなかで、ターボの性能をより引き出す解決策としての採用だったが、当時、アフター市場では2.7リッターへの排気量アップが主流であったが、400Rの登場を受けて2.8リッター化が主流になっていく。 ボディはひと際存在感を出すため、純正のシルバーから原色系のレッドにオールペン(現存するもう1台はイエロー)。275/35R18というワイドタイヤを装着するための片側25mmのオーバーフェンダーや、冷却効率を高めるダクト付きボンネット、ツインプレートクラッチ、カーボンプロペラシャフト、HID(ディスチャージヘッドライト)など、レース直系の最新アイテムとノウハウを惜しみなく投入。 足まわりにはビルシュタイン製のCリング式車高調を採用し、シートはアルカンターラで総張り替え。320km/hスケールのオリジナルメーターへと交換するなど、内外装、足まわりに至るまで特別な装いに仕立てられていたことが、多くのスポーツカーファンを魅了した。