半導体バブル異変「AIかそれ以外」で明暗くっきり、“異次元の生産”に沸くアドバンと赤字転落ロームの違い
「今の半導体産業は、ひと言で語り尽くすことができなくなっている」 半導体市場の二極化が鮮明になってきている。半導体シリコンウェハーの世界トップ・信越化学工業が10月に行った2024年4~9月期決算会見の席上、同社の轟正彦専務が語った冒頭の言葉が、現在の半導体市況を象徴的に物語る。 【図で見る】絶好調から一転、ついに赤字転落したローム 半導体市場全体は好調だ。8月以降、金額ベースでの世界市場は過去最高を更新。ただ、好調なのは「AI半導体」だけ。高性能で単価が高いため、市場全体を押し上げているのだ。「それらを除いた半導体市場は前年同期比4%減と低調」(轟専務)。
信越でも、ウェハーを含む電子材料セグメントの4~9月期売上高はAI需要の追い風が吹き、前年同期比9.3%増と好調だった。ただ、ウェハー売上高のうちAI向けは1割ほど。今後は「半導体メーカーではこれ以上、ウェハー在庫を増やせないという判断で在庫の調整を強めたいという声が増えてきている。市場全体がひと休みになりそうだ」(同)。 ■大活況の大手装置メーカー2社 半導体関連メーカー全体を見渡しても、「AIかそれ以外か」で明暗が分かれている。
“明”を代表する一社は、アドバンテストだ。 アドバンテストが手がけるのは、半導体がきちんと動作するかを製造工程の最終段階などで試験するテスタと呼ばれる装置。同社は今2025年3月期の本業のもうけとなる営業利益について、期初は900億円を見込んでいたが、2度の上方修正を経て1650億円(前期比2倍)へ引き上げた。 テスタの供給能力は逼迫状態で、「大忙しの製造現場では“異次元の生産”が合言葉になっている」(アドバンテストのIR担当者)。供給対応次第で業績は「さらなるアップサイドも」(同社のダグラス・ラフィーバCEO)という活況ぶりだ。
現在、急激に成長している、いわゆるAI半導体には2種類ある。1つ目は、エヌビディアのGPU(画像処理装置)に代表される演算用のロジック半導体。2つ目は、そうしたロジック半導体が演算を行う際に組み合わされて使われる、超高性能なメモリー(DRAM)の「HBM(広帯域幅メモリー)」だ。 テスタ市場で過半のシェアを握るアドバンテストでは、ロジック・メモリー用途ともに引き合いが急増している。ロジックでは生成AIブームに火がつく以前からエヌビディアを顧客に抱えており、同社製GPUのテスト工程を一手に担う。