VWは国内工場閉鎖検討…欧州EV不振で見直し急務、日系メーカーは?
日系メーカー、世界でHV伸長 利益を投資に
苦境にある欧州メーカーと比べ日系メーカーはどうか。パワートレーン(駆動装置)をEVに傾斜せず、環境性能が高く、価格が手頃なハイブリッド車(HV)の販売が世界で伸びている。堅調な業績を支え、EVなど将来の電動化戦略を進める原資に充てられている。中国・欧州市場の比率が高い欧州メーカーと比べ、日系メーカーは日本、米国、アジアと多様な市場に展開していることも影響を軽微にしている。 だが、競争力を磨く中国メーカーとは今後、世界で競う関係となる。日系メーカーが注力してきた中国市場は中国メーカーが拡大し、コロナ禍を経て環境は一変。ガソリン車を強みとする日系メーカーの中国販売台数は前年割れが続いている。競争力あるNEVに乏しく、有効な対抗策を打ち出せていない。 日系メーカーが牙城としてきたタイなどのアジア市場も切り崩されている。タイの新車販売は減少が続き、事業規模の縮小や撤退を余儀なくされた日系メーカーもある。一方でBYDはタイに工場建設を計画するなど虎視眈々(たんたん)と勢力拡大を狙っている。 国際エネルギー機関(IEA)の見通しでは世界の自動車販売に占めるEV比率は30年に40%、35年に50%に達すると予測する。脱炭素や環境規制に対応するためにはEVの重要性は揺るがない。中長期での市場成長を見据え、研究開発や設備投資の手を緩めてはいけないだろう。 ソフトウエア定義車両(SDV)を含めた次世代EVへの対応、EVバッテリーにもコスト競争力あるリン酸鉄リチウムイオン電池(LiB)や航続距離の長距離化が見込める全固体電池もテーマだ。燃料電池車(FCV)や合成燃料などの技術要素もある。マルチパスウェイ(全方位戦略)が日系メーカーの勝ち筋になる。 対中国の視点で見ると、日本や欧米の伝統的な自動車メーカーを接近させる契機にもなる。トヨタ自動車と独BMWが水素戦略で協業を拡大し、米ゼネラル・モーターズ(GM)と韓国・現代自動車(ヒョンデ自動車)が戦略分野での協業を検討する。ホンダと日産自動車、三菱自動車は戦略的パートナーシップを結んだ。競争力の維持には巨額な投資ができる規模が不可欠。部品メーカーも含め再編の動きが活発化する可能性がある。 レアメタル(希少金属)などバッテリーの原材料となる重要鉱物は中国が圧倒的な生産量を占める。中国依存を下げるサプライチェーン(供給網)を構築することが急務だ。欧州メーカーの苦境は世界の自動車産業に課題を投げかけている。