高齢者はアプリ拒否? 電話配車を残した「日本版ライドシェア」の知られざる苦悩
7ヶ月での方針転換と高齢者重視
日本版ライドシェアの配車アプリに関する国交省の方針は、わずか7か月で大きく変更された。当初は高齢者にも配車アプリを使ってもらおうという方針が検討されていたが、最終的には、高齢者に使いやすい電話配車を引き続き提供するという方向に転換された。 省庁が推進する事業はユニバーサルサービスが基本という観点から考えると、誰にとっても使いやすいプラットフォームを目指す場合、その結果として高齢者向けのサービスが優先されることになる。 これは配車アプリに限った話ではなく、若者は年長者のライフスタイルやファッションを真似しないため、同じような事例が見受けられる。 たとえば、50代の父親が着ている普段着を10代の息子に勧めても、ほとんどの場合、息子はその服を選ばないだろう。実際、海外ではライドシェアが 「若者のライフスタイルの一部」 として広がった経緯がある。そのため、日本版ライドシェアが官公庁主導の事業である以上、そのプラットフォームが高齢者向けになるのは、自然な流れともいえる。
「印象」が成功の鍵
新しいテクノロジーやその活用に関する事業では、印象が極めて重要だ。ところが、日本版ライドシェアはこれまで説明されてきた施策にもかかわらず、日本経済新聞で 「アナログ・ライドシェア」 と表現された。しかし、この表現が 「日本版ライドシェアは旧態依然としている」 といった印象を与えかねない点は、事業にとって大きな足枷となる可能性がある。 日本版ライドシェアが成功するための鍵は、若者層が凄いと感じるような技術や仕組みを優先的に整備し、それを積極的に披露することだ。 もちろん、高齢者向けの配慮も重要だが、時代をけん引するのは若者であり、彼らが新しい文化を広める力を持っていることを国交省は認識すべきだろう。
上原寛(フリーライター)