高齢者はアプリ拒否? 電話配車を残した「日本版ライドシェア」の知られざる苦悩
9月の大きな変化
国土交通省の物流・自動車局旅客課長は、2024年9月10日付で、各地方運輸局自動車交通部長および沖縄総合事務局運輸部長宛に「配車アプリを使用しない自家用車活用事業の導入について」という事務連絡資料を発表した。 「自家用車活用事業(以下、「日本版ライドシェア」という。)は、運送の引受け時に発地及び着地が確定している運送であることが必要なほか、事前確定運賃に準じた運賃・料金であることが必要なため、これまで、配車アプリを使用した日本版ライドシェアが展開されてきた。他方、十分に配車アプリが普及していない地域においても、タクシー不足を補完して「移動の足」を確保していくため、タクシー事業者や自治体から日本版ライドシェアに取り組む意向が示されているところである。このため、配車アプリを使用しない日本版ライドシェアの導入に当たっての具体的な手順等について、下記のとおり明らかにする。また、別添のとおり、ガイドラインも作成したので、管内のタクシー事業者に周知されたい」 以下、同様に引用する。 1.配車依頼への対応について (1)利用者から配車アプリ以外の手段で配車依頼があった場合において、日本版ライドシェアによる運送サービスを提供する際には、タクシー事業者は、利用者から事前に承諾を得ること。 (2)タクシー事業者は、利用者から乗車地点及び降車地点を聞き取ったうえで、電子地図(一般的に流通しており、地図情報が定期的に更新される仕組みを持ったものに限る。以下同じ。)を用いて、合理的なルート(最短距離のルート等)及び運賃・料金を提示し、利用者の同意を得ること。 (3)運賃・料金については、電子地図を用いて算出したルートの距離制運賃(時間距離併用制運賃を除く。)に、地方運輸局長等が定めた係数(係数が定められていない営業区域については、人口規模別のみなし係数)を乗じて算出すること(1円単位を四捨五入して算定するものであること。ただし、100m単位の表示となる地図を使用する場合は、100m単位で判断すること)。 (4)各種割増及び割引を適用すること。ただし、通常時間帯と割増時間帯をまたぐ可能性のある場合においては、配車時にそれぞれの時間帯の比率を確定し、割増時間帯に割増運賃を適用できることとする。 (5)各種料金は事前確定運賃とは区分して適用すること。 (6)運送途中で利用者の都合によって走行予定ルートや目的地を変更する場合は、自家用ドライバーは営業所に連絡し、変更地点を経由地として、新しい目的地までの距離を算出し、その総距離に応じて運賃を算出すること。 (7)利用者による対価の支払いは、現金でも可能である。 (配車アプリを使用しない自家用車活用事業の導入について-国交省) 上記の流れを分かりやすく図解した資料もあり、これはフリー素材サイト「いらすとや」で配信されているイラストを組み合わせて作成されたものだ。 これらの連絡指示と図解入りガイドラインは、令和5年度第1回自動車部会で使用された資料の文言とは一致していない。 「今後、アプリ導入を促進し、デジタルデータでタクシーの状況を見える化」 という方針は撤回され、今後も電話を利用したタクシーおよび日本版ライドシェアの配車が認められるとの解釈が可能だ。これにより、一時的な措置が長期的な方針として確立されたといえるだろう。