高齢者はアプリ拒否? 電話配車を残した「日本版ライドシェア」の知られざる苦悩
「高くないアプリ利用率」についての指摘
タクシー配車におけるアプリの利用率は高くないという点は、2023年から有識者の間で指摘されてきた。特に、2023年10月に神奈川県で開催された第1回神奈川版ライドシェア検討会議では、八木達也氏(いづみタクシー代表取締役)が次のように発言している。 「あとドライブレコーダーや配車アプリということですけれど、三浦市の弊社のですね、GOをアプリ入れております。それとタクシー無線を入れておりますけれども、全迎車の95%が電話のタクシー無線です。GOアプリは何と5%以下。これは先月の数字です。ほとんどアプリ使いません三浦市民。夜アプリを限定しようということで、もしかしたら飲み客とかもうちょっと進んでる可能性ありますけれども。これが倍の10%になるとも考えられず、なかなかアプリのその敷居が高いのが三浦市民ですので、ここありきということが一番考えやすいんでしょうけど、ちょっとそこのところを認識された方がいいかなというところです」(第1回神奈川版ライドシェア検討会議議事録12ページ) 八木氏は、流しのタクシーを除き、現在のタクシーを呼ぶ手段として電話が依然として主流であることを示唆している。 実際、筆者が通う温泉施設にも、タクシー会社直通の電話がカウンターに設置されており、地方都市でも同様のケースは珍しくない。このような状況では、アプリの普及には時間を要する現実がある。
電話配車の強みとアプリの課題
予見していた配車プラットフォームもある。 電脳交通(徳島県徳島市)は、2021年に日本初の電話注文による事前確定運賃サービス機能を開発し、実際にサービスを提供している。 2024年9月4日、国交省が日本版ライドシェアの電話配車対応をタクシー事業者に求めたが、それから3年も前に電脳交通は事前確定運賃を前提とした電話配車を実施していた。今後予想されるのは、 「アプリも用意しているのに、誰も使わない」 という現象だ。日本では、電話でタクシーを呼ぶ習慣が根強く、アプリの利用が広がりにくいのが現実である。このため、配車サービス提供者は ・あまり使われないアプリ ・高齢者を中心に多く利用される電話サービス の両立に苦しむ可能性が高い。