ウグイス嬢の報酬は1万5000円だけど、ポスター写真の撮影は100万円超…!衆院選候補者に密着取材してわかった「選挙に裏金が必要だったワケ」
制度を見直す時期に来ている
このほかにも、選挙にカネがかかるところはある。 選挙チラシの新聞への折り込み費やインターネット広告費だ。選挙期間中の有料ネット広告は禁止されているが、政党が自党の選挙運動用サイトなどに直接リンクする有料広告は掲載できる。このため宣伝のために利用する候補者もいるのだ。 また、票の取りまとめ依頼のお礼に現金を渡す「買収」をすれば、必要な資金は一気に跳ね上がる。こうした行為は犯罪だが、事件になったケースもある。 '19年の参議院選挙で起きた大型買収事件では、河合克之元法相と妻の案里氏が地元広島の県議、首長、後援会員ら100人に計2800万円余りを渡したとして有罪判決を受けた。このときには、安倍晋三首相(当時)から河合氏側に1億5000万円が提供されていた。 A氏の場合、有料ネット広告も使わず、減らせる出費は可能な限り抑えている。こうした工夫のお陰で、当初見込んだ500万円程度の予算で収まるのではないかと予想する。 とはいえ、政党から公認されなければ自分で供託金や公認料を負担し、選挙費用に最低でも500万円前後が必要とあっては、政治への志だけで立候補はできない。他党の公認候補に聞いても「公認料だけでは全く足りない」と言う。やはり政治にはカネが必要なのか。A氏に尋ねるとこんな答えが返って来た。 「選挙をやろうと思ったらお金は必要です。いまの制度では、ちゃんとやろうとすればするほど必要になる。それが行き過ぎた結果に起きたのが自民党の裏金問題です。しかし今の時代、ネット投票やポスターのデジタル掲示などを進めて、カネのかからない選挙にすることは十分可能。出馬しやすい環境にするためにも、制度を見直す時期に来ています」 政治とカネを巡っては、何度も不祥事が繰り返されてきた。政治不信を招いた自民党の裏金議員が今回の選挙で当選するのか。これまで以上に有権者の意識が問われている。
形山 昌由