ウグイス嬢の報酬は1万5000円だけど、ポスター写真の撮影は100万円超…!衆院選候補者に密着取材してわかった「選挙に裏金が必要だったワケ」
顔写真の撮影料は100万円超
予算が決まればあとは支出だが、これには「公費負担」と「自己負担」の2つがある。うち「公費負担」には7種類があり、得票率が低くて供託金が没収されない限りは支払いが保証される。候補者にとってはフトコロの痛まないありがたい経費だ。 A氏の選挙戦になぞらえて、主な公費負担を個別に見ていこう。 選挙期間中に候補者が遊説を行う選挙カー。A氏が使用するのは旧式のトヨタハイエースをベースに仕立てたもの。すでに選挙で使われた実績のあるもので「拡声器の音が良いから、知り合いの元議員のツテで借りた」ものだ。 選挙カーで公費負担があるのは、車のレンタル料(1日1万6100円以内)、看板取り付け費(4枚21万4404円以内)、ガソリン代(1日7700円以内)、運転手の報酬(1日1万2500円以内)で、これらを足した選挙期間中(12日間)の最大額は約65万円。項目ごとに設けられた限度額内に抑えれば自己負担はゼロだ。 「通常、選挙カーのレンタル専門業者から借りると自己負担は50万円ぐらい。人気のガラス張りの選挙カーだと1ヵ月で100万円ぐらいします。私の場合、自己負担は10万円ぐらいに抑えることが出来ました」(A氏) 次が選挙運動用のハガキ、ビラ、ポスターの作成だ。公費負担はハガキの場合、候補者個人が出せる枚数制限いっぱいの3万5000枚を作成したときには約27万8000円。ビラは同じく上限の7万枚の場合は約49万円。ポスターは公営掲示場数の2倍まで対象となるため、739ヵ所の掲示場があるA氏の選挙区の場合、約118万8000円までは公費で払われる。 ハガキとチラシはそれぞれ政党用として2万枚、4万枚が別枠で配布できるが、こちらには公費負担がない。今回、A氏はハガキ約4万5000枚、ビラ約11万枚を用意した。選挙用のポスターは張替が可能なため1400枚ほど作った。 公費で作れるとはいえ、こだわりだすとその範囲では収まらなくなる。 「評判の良いカメラマンはポスターの顔写真の撮影料で100万~200万円の請求が来る上、スタイリストや衣装など制作に関わるコストを積み上げていけば公費負担の枠を超えてしまいます。チラシも実際、公費では足りません」(A氏) 費用を抑えるため、こうしたことに詳しい選挙コンサルタントに一括発注することで予算内に納めてもらう候補者は多いと言い、A氏も知人の会社を経由して外注することで公費負担の枠内に収めることが出来た。 資材や用品の作成は公費で賄えたとしても、12日間の選挙戦を有利に運ぶにはマンパワーが必要だ。「人件費は選挙でカネがかかる一要素」と言う。