ウグイス嬢の報酬は1万5000円だけど、ポスター写真の撮影は100万円超…!衆院選候補者に密着取材してわかった「選挙に裏金が必要だったワケ」
ウグイス嬢には断られることも多い
衆議院が解散した10月9日に神奈川県内にあるA氏の選挙事務所を訪れると、ボランティアで集まった人たちが選挙ハガキに宛名シールを黙々と貼る光景が目に入った。宛先は事前に横浜市の選挙管理委員会に置いてある有権者名簿を閲覧して書き写したものが4万5000人分ほどある。ハガキにシールを1枚貼るのに10秒ほどかかるから、一人で1日8時間やれば15日間もかかる計算だ。 それだけではない。チラシに貼る証紙も11万枚ある。選挙期間が始まった後もボランティアや秘書の人たちが夜中まで手分けして貼り続けても1日、2日では終わらない。「デジタル化が進んだ時代に大量の紙の証紙を貼ること自体、無駄な作業だ」との声が聞こえて来た。 選挙に関わる「選挙運動員」のうち、投票依頼やビラ配りを行う人へは報酬を払うことが禁じられている。買収になるからだ。だが交通費の実費は払うことができ、宿泊の場合1泊1万2000円以内、弁当料として1食1000円までを支給できる。 一方、報酬を払える人たちもきちんと決められている。ウグイス嬢、手話通訳者、要約筆記者、事務員。そして候補者の指示でポスター貼り、証紙貼り、街頭演説の設営など機械的な作業を行う労務者の人たちだ。 いくら払えるかは項目ごとに細かく決まっている。例えばウグイス嬢の報酬は1日1万5000円以内。事務員は1万円以内だ。 A氏によると、遠方から来るウグイス嬢や事務員には交通費、宿泊料(1泊1万2000円以内)、弁当料を支給する。しかし、ポスターや証紙貼りを行う人たちは労務者にせず、完全なボランティア扱い。他陣営ではポスター貼りを有償で配送業者に頼むこともあると言うから、かなりの違いだ。 そもそも、ウグイス嬢を規定の報酬額で雇うのも難しい。一日(朝8時から夜8時)拘束された場合の時給換算は1250円となり、神奈川県の最低時給(1162円)とそう変わらない。マイクを持つ仕事をする「プロ」の人たちの相場と折り合わず、断られることが多いと言う。A氏は広く知り合いに声を掛けて5人ほどのウグイス嬢を集めた。皆、仕事の合間など時間の空いているときに参加しているため、交代でこなす。ボランティアでお願いしているケースもあるという。