限定的なブームを打破できるか:トークン供給と需要のミスマッチ
ビットコイン(BTC)の上昇はイーサリアム(ETH)に富の波及効果をもたらし、最終的には「アルトコイン」のロングテールに波及するというのが以前はよく知られた考え方だった。「アルトコイン」とは、ビッグ2の「メジャー」以外のすべての暗号資産(仮想通貨)を指す愛称。このダイナミクスは、前回のサイクルでも実際に起きた。ビットコインとイーサリアムが上昇すると、他のすべての暗号資産も上昇した。 現在、メジャーは、他の暗号資産市場、特にビットコインはこれまで以上に切り離されているようだ。この1年で130%上昇したにもかかわらず、多くの人が期待していた「すべての上昇」は起きていない。 ソラナ、AIトークン、ミークコインなど、一部の銘柄は好調なパフォーマンスを見せたが、市場の大半はパフォーマンスが大幅に低下した。 離散・ばらつきが今サイクルは続いており、今後も続く可能性が高い。
トークン発行の増加
すべての市場は、シンプルな需要と供給の機能だ。暗号資産市場は過去数年で大幅に成長したが、新しいトークンの総供給量も増加しており、市場は今、供給面で大幅な不均衡に苦しんでいる。 今、新しいトークンの供給は、これまでに経験したことのないペースで増加している。pump.funのようなトークン発行サービスの台頭により、新しいトークンの発行は急増し、そのほとんどがミームコインだ。 同時に、数年前のVC投資ブームの際に投資を受けたプロトコルやdApp(分散型アプリ)は、トークンのロック期間が終了して、アンロックされたトークンが市場に溢れ始めている。暗号資産投資では、リターンはトークンの売却という形で実現されることが多い。 一方で、時価総額10億ドルを超える暗号資産の数は前年比で50%増加している。多くのトークンが時価総額を伸ばしていることは、価格を維持するために多くの資金が必要になるということだ。
取引高は回復せず
しかし現状、需要はそれほど伸びていない。例えば、大手暗号資産取引所の取引高は、前回サイクルの水準に及ばない。 前回サイクルとのもう一つの大きな違いは、2021年に見られた熱狂を煽った暗号資産クレジットとレンディングの伸び悩みだ。低金利と飽くなきリスク志向を背景に、暗号資産レンディング市場は2021年から2022年にかけてピークに達した。 参考までに、ジェネシスのレンディング残高は2022年第1四半期、前年同期比62%増の約150億ドルでピークに達した(レンディング総額はその前四半期に500億ドルでピークに達していた)。 しかし、こういた大手レンディング事業社(ブロックファイ、セルシウス、ボイジャー、ジェネシスなど)の崩壊により、レンディング事業者が煽った投機的ニーズは阻害した。コインベース(Coinbase)の機関投資家向け融資事業のような新規参入があり、回復の兆しが見え始めているものの、この分野は数年前と比較すると依然として低調だ。さらに現在の高金利局面では、資金をオンチェーンに移し、不安定な市場に投資するインセンティブはあまりない。現金やステーブルコインの保有に対して5%の利回りを得ながら、様子を見る方が得策だ。