「脳梗塞」の予後、ウエストが太いほど良好 脂肪が機能回復に関与の可能性
ウエスト周囲長とは?
編集部: ウエスト周囲長ついて教えてください。 甲斐沼先生: ウエスト周囲長とは、へその高さで測った腹囲です。ウエスト周囲長を測ることで、内臓脂肪が蓄積しているかがある程度予測することができます。ウエスト周囲長が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合、内臓脂肪の蓄積が疑われます。みなさんも聞いたことがあるメタボリックシンドローム、いわゆるメタボとは、まさにこの状態のことです。ちなみに、肥満は、肥満に伴って生じる糖尿病や高血圧症、脂肪肝、痛風などの改善のために治療の対象となることがありますが、メタボは明確な病気ではなく、病気の予備軍としての意味合いが強くなります。
今回の研究内容への受け止めは?
編集部: 製鉄記念八幡病院らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: 肥満が脳卒中を発症させる危険因子であることは数々の研究で明らかになっていますが、脳卒中患者に限定する中では肥満の方が予後が良好であるという「肥満パラドックス」が過去に示唆されてきました。 これまでに脳卒中発症後の機能的な転帰を鋭敏に反映する肥満関連指標は確立されていませんでしたが、製鉄記念八幡病院の研究グループは、腹部脂肪の指標となるウエスト周囲長(WC)と急性虚血性脳卒中(脳梗塞)発症後の短期機能転帰や死亡率との関連性を検討しました。ウエスト周囲長は、良好な機能転帰と独立した関連がみられたという研究結果から、急性期脳梗塞を発症した後において、腹部の脂肪成分が神経学的な機能予後に影響する重要な因子である可能性が示唆されます。また、腹部の脂肪細胞由来から分泌される数々のサイトカイン性代謝物質が脳梗塞発症後の細胞炎症に作用して、神経学的な機能予後の回復に寄与するとも考えられており、今後さらなる詳細な研究成果が待たれるところです。
編集部まとめ
製鉄記念八幡病院らの研究グループは、ウエスト周囲長と脳梗塞後の関連性を検討したところ、ウエスト周囲長の長さは良好な機能転帰と独立した関連が見られたことを明らかにしました。今後の研究にも注目が集まりそうです。